IPOを目指すスタートアップの成長を加速するM&A活用術と留意点|EY新日本 IPOグループ統括 藤原選氏に聞く(後編)

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M&Aで世界で近年注目されているキーワードとは

―その他に、M&Aを活用した成長戦略についてアドバイスはありますか。

最近増えているアーンアウト条項(※2)を活用したM&Aは留意したほうがいいですね。アーンアウト(条件付対価)とは、初期に投資する資金を低く抑える目的等で、一定の業績等を達成したら追加で対価を払う手法です。アーンアウトの会計処理は、企業結合日の時点で、確定している対価の額でまずは会計処理を行い、その後、対価を追加的に支払うことが判明した時点で追加的な会計処理を行います。

すなわち、追加で支払う金額を企業結合日時点で認識されたと仮定したうえで償却計算し、追加対価の前期以前の償却費分も含めて目標達成した会計年度に費用計上するので、予算コントロールがやりづらい面があります。アーンアウトは「初期支払いが安いから買いやすい」と思いがちですが、上述の側面も考慮のうえ当該条項を慎重に活用する必要があります。

最後に、スタートアップ自身が行うM&Aではありませんが、M&A関連のホットトレンドとしてSPAC(特別買収目的会社)(※3)について触れておきます。米国で件数が急増し、アジアでも解禁に関する議論が進んでいるようなので、東証は現行制度上形式基準を満たさないので認めていませんが導入の検討を慎重に行っている段階であると考えますので、目配りはしておく必要はありますね。

IPOを目指すスタートアップへの1番のメッセージは、成長戦略の重要な1つのツールであるM&Aを上手く賢く活用し、今回申し上げた留意点を踏まえ、成功の確率を高めていただきたいということです。

<用語解説>

※1)株式交付:株式会社が他の株式会社をその子会社とするために当該他の株式会社の株式を譲り受け、その対価として譲渡人に当該株式会社の株式を交付することをいい、株式交換とは異なり、他の株式会社を完全子会社とするケース以外にも適用することができる

※2)アーンアウト条項:M&A取引において、買収代金の額をクロージング後の買収先企業の業績等に連動させる条項

※3)SPAC:Special Purpose Acquisition Company(特別買収目的会社)。特定の事業を持たず、未公開会社や事業の買収を目的とした空箱企業のこと

企画:ストライク 企業情報部

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