新興国家オランダは新興宗教プロテスタント・カルヴァン派の国家という点以外にも、いくつかの特徴がある。それは「分権主義」と「共和制」だった。オランダが位置した低湿地帯は、無数の水路で国土が細かく分断された、中洲のような土地の集合体だ。これはあくまで筆者の推察だが、このような地政学的事情がオランダが分権的な共和国を形成した理由の一つではないかと思える。
通常、分権国家や共和制は、広すぎる国土を効率的に管理するために必要に迫られて選択する統治形態だ...
イベリア半島を舞台とし、スペインキリスト教国家の中で人生を翻弄されたユダヤ教徒の人々の足跡を追ってきた本コラム。1492年、ついにスペインを追放されたユダヤ教徒の一部は16世紀以降オランダに集結。近代の「幕開け」に立ち会っていくことになる。
ユダヤ陰謀論を流布したフェイク本「シオン賢者の議定書」に触発され、これを自らの信念の実現に大いに利用できると考えた男が、ドイツ帝国で急速に台頭する。アドルフ・ヒトラーだ。ヒトラーが率いたナチスドイツは「積極的キリスト教」運動を展開する。
スペインに渡ったユダヤ教徒たちは、どのようにして経済的に自立し、定住したのか。そして、どのような経緯で、金融の発展に関わっていくことになるのか。今回から本題となるユダヤ教徒と企業金融(コーポレートファイナンス)の歴史について触れていきたい。