ビズサプリの泉です。
最近、監査法人の交代が多いなとは思っていたのですが、先日帝国データバンクから「上場企業の監査法人移動調査(2021年上半期)」が発表され、今年は昨年に比べても多くなっていることが明らかになっています。私は監査業務を行っていないのですが、会社の決算サポート業務などの際にクライアントと話をすることも多いのでクライアント側から会計士としてみた監査法人の交代についてお話したいと思います。
先述の帝国データバンクの資料において、「就任は中小、準大手、退任は大手が目立つ」となっています。大手とはいわゆるBig4と呼ばれる4大会計事務所ということで有名ですが、その下の準大手の定義については一般的には次のようです(「令和3年版モニタリングレポート」公認会計士・監査審査会)
大手:有限責任監査法人トーマツ、有限責任あずさ監査法人、EY新日本有限責任監査法人、PwCあらた有限責任監査法人
準大手:仰星監査法人、三優監査法人、太陽有限責任監査法人、東陽監査法人、PwC京都監査法人
中小:大手、準大手以外
規模感として大手はクライアント数も100社以上、社員を含む監査従事者も1,000人以上、準大手はクライアント数50社以上、監査従事者が50人以上といった様子です。
「令和3年版モニタリングレポート」によると令和3年6月期の監査法人の交代は209社と3年前の116社と比べて大幅に増えていることに加えて、そのうち約100社の交代の理由が3年前にはほとんどなかった「監査対応と監査費用の相当性」「監査報酬」でありコストの観点からの交代が増加しているようです。
交代先としては、大手から準大手、中小への交代件数が129社となっており、規模の小さい監査事務所への交代のうち約7割は監査報酬が減少しているとのことです。
実際、私の周りでも現在の大手監査法人から監査報酬の大幅増額を求められ、監査法人の交代を検討している会社が何社かあります。
大手の法人内部の具体的な事情はわかりませんが、昨今の監査手続等の厳格化による法人内作業の増加、システム投資や監査のデジタル化などの新規手法の開発のための投資によるコスト増、監査法人内の労務環境の改善に伴う人手不足やコストの増加により、採算性の悪いクライアントには報酬の増額を迫らざるを得ないのではないかと思われます。
当然、IPOのような監査リスクが高いにも関わらず監査報酬が高くない案件については、大手が手掛ける件数は減っており、「株式新規上場(IPO)に係る監査事務所の選任等に関する連絡協議会報告書」(2020年3月金融庁)によると2018年から2019年の新規契約数について、大手は2割弱減少し、準大手が2割強増加し、準大手が大手を上回ったとのことです。
規模別監査報酬では、大手は平均74百万円、中央値37百万円に対して、中小では平均27百万円、中央値22百万円となっており(「月刊監査役」2021.7.25)、大手はより大型クライアントにシフトしていることが想定されます。
金融庁が主導する「事業性評価」ですが、満足な結果が得られていないようです。背景にあるのは、評価の難しさ。今回は、金融機関が事業性評価をどう実践するか。その分析手法について具体的に解説します。
2019年1月施行の改正開示布令で、役員報酬ので固定部分、短期・中長期の業績連動部分については具体的に有価証券報告書に記載しなければならなくなりました。