ビズサプリの泉です。

今、世間の話題はもっぱら新型コロナに関するもので、東京では小池都知事による外出自粛要請により、スーパーではティッシュやトイレットペーパーだけでなく、食料品も買いだめが起こっているようです。今回は、最近特に話題となっている在宅勤務と経理業務について考えてみたいと思います。

1.在宅勤務・テレワークとは

テレワークとは「ICT(情報通信技術)を活用し、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方」です。(厚生労働省「テレワークではじめる働き方改革」)在宅勤務とは、自宅でテレワークをすることであり、厳密には異なるものですが、業務を行う上ではあまり区別する必要はないので、ほぼ同義で扱いたいと思います。

2.テレワークのメリット・デメリット

新型コロナ以前から、昨今の働き方多様化の一環としてもテレワークの推進はされてきており、主なメリットは次のとおりです。

<会社>
1.優秀な人材の確保や雇用継続
2.資料の電子化や業務改善の機会
3.通勤費やオフィス維持費などを削減
4.非常時でも事業を継続
5.顧客との連携強化、従業員の連携強化
6.離職率が改善し、従業員の定着率向上
7.企業のブランドやイメージを向上

<従業員>
1.家族と過ごす時間や趣味の時間が増えた
2.集中力が増して、仕事の効率が良くなった
3.自律的に仕事を進めることができる能力が強化された
4.職場と密に連携を図るようになり、これまで以上に信頼感が強くなった
5.仕事の満足度が上がり、仕事に対する意欲が増した

一方、主なデメリットは次の通りです。

1.工場や、紙の書類などが業務上必要になる場合に業務ができない、あるいは著しく非効率になる
2.情報セキュリティを十分に確保できる環境がない
3.コミュニケーションが希薄になる、新メンバーへのフォローも薄くなる
4.その過程がみえづらくなりアウトプットベースの業務評価となる
5.労働時間を正確に把握するのが難しい
6.デスク等がない状況での長時間労働による体への悪影響

では、具体的に経理業務への影響はどのようなものでしょうか。

3.経理業務への影響

全般的な業務

経理は取引先との請求書のやりとり、金融機関、税務署等からの書類の送付など、まだまだ郵送によるものが多く、郵送物の処理が課題となります。この点、徐々に電子申告やインターネットによる手続きなど書類の提出も減ってきており徐々には解決していきそうです。

支払業務

・取引先や事業部からの請求書の回収
請求書はまだまだ紙の場合が多く、また、実際に事業部からの支払依頼はワークフローを使っていても紙の請求書を添付して経理部に提出するのが一般的です。もちろん、ワークフローにpdfなどで添付することも考えられますが、紙の請求書をpdf化するにはスキャナが必要であり、完全に自宅で作業するのは難しそうです。

・請求書と支払データの照合
経理部では実際の支払データを作成する際には、支払先毎に名寄せを行い、請求書の束と実際の支払額が一致していることをチェックします。pdfとなると確認作業がかなり非効率となりますが、RPAなどでOCR的に自動照合する、あるいはもっと大胆に中国のように請求が電子化されれば、そもそもそのような業務はなくなるでしょう。

・振込業務
昔は振込のために伝票に銀行印を押印し窓口で手続きをしてきましたが、今はネットバンキングがかなり普及しているので、基本的には問題なさそうです。ただし、振込不備の場合や組み戻しなどについて、銀行とのやりとりはまだまだ電話、紙、FAXを使うことも多く、一部対応が難しい業務が残ります。

・金融機関業務
振込とは直接関係しませんが、現金の受け取り、金融機関への銀行印が必要な書類のやりとりなどはまだまだ対応が難しい業務が多いといえます。

経費精算

経費精算では、立て替えた従業員が領収書を紙に貼付して紙の申請書を経理に提出することが一般的であり、支払業務と同様の課題が残ります。この点、最近は電子帳簿保存法の要件も緩和され、写真をとってワークフローで申請することで対応が可能になりつつあります。(詳細な要件はここでは省略します。)

月次決算作業

月次の費用計上においては、上記の請求書や領収書などに基づき起票することが多いため、ワークフローなどにより電子化することで対応できると考えられます。

期末決算

・税務
大法人においては電子申告が義務化されているように、電子申告、電子申請がかなり浸透してきており、主な業務は問題なさそうです。ただし、中小企業ではまだまだ普及していなかったり、支払調書の送付業務など一部の業務では紙による運用が残っています。

・上場会社の法定開示業務
上場会社においては法定開示を行いますが、その前提として監査法人による監査をうけます。監査手続きでは、確認状や請求書の提出を行うのですが、まだまだ紙の資料が多く、往査自体は不要だとしても、監査対応業務を完全にリモートで行うのは難しそうです。

4.今回を契機とした業務フローの変更について

現状では完全に全く出社しないフルリモートでの対応は難しいですが、テレワークを部分的に導入することはできそうです。

現状の新型コロナのような完全に出社しないという状況は非常事態なのですし、できない業務はあきらめる(月次決算や支払いも一定あきらめる)といった思い切った判断をするのも個人的にはあり得るのではないかと思っています。3月決算の会社が今から繁忙期となりますが、決算発表、税務申告、株主総会といったスケジュールについても各社どのように対応するか大変興味深いところです。

また、今回の新型コロナが契機となり、テレワークできる業務の切り分けや、思い切った業務フローの変更が行われ、テレワークの普及が進むのではないかと思っています。

文:泉 光一郎(公認会計士・税理士)
ビズサプリグループ メルマガバックナンバー(vol.113 2020. 3.31)より転載