国は企業の将来性、事業性を見ろ、と言うけれど…

対応に苦慮する金融機関

2019年11月20日、首相としての通算の在職日数が2887日となり、桂太郎氏を抜き単独で憲政史上最長となった。しかしながら、当初掲げた経済政策「アベノミクス」は3本目の矢である「成長戦略」がなかなか奏功せず、日本経済は常に先行きの不安を抱えたまま低位安定で推移している。

さらには、中小企業を中心に事業承継の問題が顕在化しつつあり、M&A件数は2017年には3,000件を超え過去最高(レコフデータ調査)、休廃業・解散件数は2016年に29,583でこちらも過去最高を記録するなど、経済環境だけでなく、生産年齢人口の減少という人口動態に端を欲する人手不足も合わさって中小企業を取り巻く環境は厳しさを増している。

このような状況の中で、2014年度以来、金融庁では「事業性評価」に基づく企業の支援を重点施策として掲げ、金融機関に対して「事業性評価」を軸とし、企業の将来性、成長性をしっかりと評価し、融資等の支援につなげるよう号令をかけている。

一方で、金融機関に話を聞くと「言うは易し、だが、実行しようとするとなかなか難しい」と対応に苦慮している現実が浮かび上がってくる。

事業性評価が難しい現状の考察と、それを踏まえて金融機関としてどのように取り組んでいけば良いか、また事業性評価を受ける側の企業としてどのような対応が必要か、といった要点について述べたい。

現在の融資判断と相反する方向性

信用スコアを基にした与信の自動化

今後の経済の先行きの不透明さ、特に日本における経済停滞に備え、各メガバンクをはじめとする金融機関では、各社とも数年かけて人員を減らしていく方針なのは周知の通り。日本ではなく、成長分野であるアジアなど海外でのM&Aにより今後の収益源を成長市場に求める動きは必然であり明白である。

現在、日本国内での融資においては、各銀行ともスコアリングモデルを用いてほぼ自動的に融資判断が出るようにシステムを構築しており、冒頭の金融庁の号令と逆行する形で人を介さない(人力に頼らない)仕組みを実現する方向に動いている。

つまり昨今の融資の仕組みでは、「企業の中身を見ようとする機会すらない」のである。これでは企業を見る目を養うことなど出来ないし、結果としてそういった人材が育つはずもない。

期待されるAIの役割

では、「いっそのことAIで企業の定性情報も評価させたらどうか」という声も聞こえそうだが、残念ながら現在のAIではそこまで対応できない。

オックスフォード大学や野村総合研究所などが発表している、職業別にAIに代替される確率を算出した調査でも、経営コンサルタントは代替性が非常に低い。

複雑な外部因子と内部因子が絡みあう環境下で、その企業において最適な意思決定を行う、または意思決定のための材料を整理し、打ち手の選択肢を評価すること自体が難しいし、それらの意思決定の結果として実現されるその企業の将来性、事業性をきちんと見極めること自体が、元々相当難易度の高いことなのである。ましてや、融資の自動化・効率化を進めてきたこのタイミングの中での実施を求められても実現性が低いのは言うまでもない。