1.諸行無常

ビズサプリの花房です。在宅時間が多くなったことで本を読む時間も増えており、毎週のように書店で新たな本を探しています。様々なジャンルを選ぶよう心がけていますが、最近はミステリー小説にはまっています。書店の雑誌コーナーに行くと、「アフターコロナの時代に…」と言った、タイトルや、記事の雑誌が増えてきているようですが、まだ国内でも海外でも感染拡大は続いており、ウィズコロナがどこまで続くか分からない中で、アフターコロナの状況を予想してその対応の仕方を語るのは、いささか時期尚早な気がします。

実際、第2波、第3波、がいつかは分かりませんが確実に来るでしょうし、ワクチンについても実用化しても直ちに皆に行きわたるわけではないため、ワクチンが簡単に手に入る状況にならないと、コロナが収束した後の状態、すなわちアフターコロナは実現しないと言えるでしょう。ワクチンにより集団免疫が出来れば、感染は1~2年で収束する可能性があります。しかし、効果的なワクチンが現れず、自然感染による集団免疫の獲得を待つとなると、3~5年、あるいはそれ以上の長期にわたり、感染拡大が続く恐れもあると言います。

それまでは、人の移動を含めて、経済活動が大幅に制限されるため、長期化するほど、経済へのダメージは予想がつかないほど大きなものとなる可能性があります。世界銀行が2020年6月8日に発表した、新報告書「世界経済見通し(GEP)2020年6月版」によると、2020年の世界経済成長率は5.2%減になるとの予測で、これは第二次世界大戦以来最悪の景気後退であるとのことです。

世の中は絶えず変わりゆくものです。仏教の教えでは、世の中のものは全て移り変わり、同じ状態でとどまることがないことを、『諸行無常』と言うそうです。「祇園精舎の鐘の声 諸行無常の響きあり」とは、日本人なら誰もが一度は聞いたことがある、平家物語の冒頭の有名な言葉ですが、この世のすべての現象は絶えず変化していくもの、ということが自然の摂理なのです。

2. 臨機応変

今年度の予算は、当初3月27日の国会で、102兆円で成立しました。これは過去最大でありましたが、さらに新型コロナ対策等で、第一次、第二次補正予算合わせて、58兆円規模の追加の歳出が決議されています。その結果、今年度の国家予算は、160兆円と巨額に膨れ上がりました。この中には、すでに受け取っている方が大半と思いますが、特別定額給付金、いわゆる、1人当たり10万円の給付金として12.8兆円の予算が組み込まれています。その他、感染症対策の費用もありますが、企業の雇用維持と事業継続支援のための予算が相当程度あります。

企業支援の予算としては、直接的な企業の支出を補助する、雇用調整助成金や家賃支援給付金、中小企業や個人事業主などに最大200万円を給付する持続化給付金もありますが、企業が当面、一番気になる資金繰り支援のための予算として、約12兆円が計上されました。これは主に、保証協会付の融資の保証料免除や、利子を実質無利子とするための資金として使われます。

企業にとって資金繰りは命綱ですから、収入が減ったとしても、金融機関からの借入の返済を始め給与や取引先への支払い等を滞りなく行っていかなければなりません。大企業などで手元資金に余裕がある会社であればいいですが、中小企業を中心に資金繰りに余裕がないところは少なくなく、まずは、当面の運転資金の確保が最優先となります。

コロナによる景気後退がどのくらい続くか分からない中で、政府支援による資金繰り確保も活用しながら何とか凌ぐ間に、次の一手を打って行かなければなりません。危「機」的な状況に「臨」んで、適切な対「応」をその時の状況次第で、適切に「変」えて対処する、まさに臨機応変な対応が求められています。

コロナ後をいくら考えても想像通りとなる保証がない中で、我々に出来ることは、まず目の前のやるべきことを見つけて、それに集中することしかないと思います。

日々それを繰り返していった結果、いつの日か、この危機的状況を乗り越えられるはずです。

3. 新しいビジネスモデル

世の中の変化が緩やかであればいいのですが、現在は時代の節目なのか、100年に1度と言われるような想定外の事象が頻繁に起きています。今年もすでに、先週は九州を中心とした豪雨がありました。そしてそれらは突発的に起きますので、誰もが即座には対応しきれず、一時的にフリーズした状況になるのは致し方ありません。しかし、このような人類にとっての危機的な状況は歴史上何度も訪れ、その度に人類はそれらを克服してきたことは、歴史が証明しています。

その時、生活様式を含めて様々なことが大きく変わりますが、その変化に対応できた企業だけ長きに渡り、生き残ることが出来たと言えます。

このような中、一早くコロナに対してうまく対応し、コロナの影響をもろともしなかった企業が、ニトリです。2020年3~5月期決算では、売上高は1737億円で前年同期比3.9%増、営業利益は同22.3%増となっています。緊急事態宣言により、最大110店舗を臨時休業したものの、巣ごもり需要や在宅勤務向けの家具の販売が伸び、ネット販売も好調だったようです。

ネット販売を駆使して巣ごもり需要をうまく取り込んだように見えますが、これはやろうと思ってすぐに対応できるものではありません。自社物流の強化を図ってきたこと、ネット通販のサーバー強化、といったデジタルトランスフォーメーションへの対応を先駆けて行ってきたことが、結果としてコロナ対応として効果を発揮しました。また多くの製品は、感染の少なかったベトナムの拠点で製造していたことが、欠品を避けられた理由となったようです。

ここまで、ニトリのように、即座にうまく対処しきれた企業は少ないと思いますが、飲食店では、多くのお店が、テイクアウトや宅配を始めるきっかけとなりました。まだ手探り状態で、採算面では課題もあるところが多いと思いますが、コロナ前の集客状況にはすぐに戻らないことを前提として、新しいビジネスモデルを構築していかなければなりません。

4. 変化するチャンス

長寿命企業、とりわけ、老舗と言われるところは、創業以来ずっと同じ事業を行っているわけではなく、時代に即して商材や取引のスタイルを変化し続けながら、事業継続してきました。生物学の進化論では、「生き残るものは、力の強いものでも頭の良いものでもなく、変化に対応出来るものである」という言葉がありますが、まさに企業も同じで、自然や政治、世の中のテクノロジーと言った環境変化に応じて、自らを変革できる企業が存続していくことが出来ます。

世の中は常に変化していますから、いつかは変わっていかなければならない中で、今回の新型コロナウィルスの騒動は、否応なしに、すぐに自らの企業の在り方を変えていかなければならない状況が訪れました。前向きにとらえれば、ショック療法的かもしれませんが、これを変革のチャンスと考えて取り組めばいいのではないでしょうか?

老舗と言えば、一般的には「保守的」なイメージがあるものですが、常に新しいものにチャレンジする「革新性」も併せ持っていると言われます。その企業の根幹となる、経営理念のような守るべきものは守り、一方で市場ニーズを汲み取って、あるいは時代を先読みして、変化を恐れずチャレンジし続けることが、企業を継続させる秘訣かもしれません。

そしてより大事だと考えられることは、そこで働く人ではないかと思います。

昔から言われる、日本企業の良さは、同時に強みにもなっている部分ではありますが、人を育て、人を大事にすることだと思っています。トヨタ自動車社長の豊田章男氏は、「モノづくりは人づくりから」、ということで、「人づくり」にとことんこだわっていきたいと仰っています。それは、経営の神様と言われた、松下幸之助翁が言われたように、「企業は人なり」だからでしょう。

文:花房 幸範(株式会社ビズサプリ パートナー 公認会計士)
株式会社ビズサプリ メルマガバックナンバー(vol.120 2020.7.15)より抜粋