前回の記事では、企業の将来性や事業性をきちんと見極めることは、相当難易度の高いことであると解説した。ここからは厳しい現実を踏まえた上で、どうすれば良いか、という具体策について触れたい。

事業性評価ー金融機関はどう取り組むべきか

まずは外部の専門家を活用せよ

結論から言えば、短期的には外部を活用、中長期的には出向や実践的なトレーニングにより、内部人材を育成していく、という二本立ての対応が金融機関には求められる。

短期的に外部を活用、と言っているのは何も著者がコンサルティング会社を経営する立場だから言っているポジショントークではない。現実問題として、既に金融機関の多くは外部の専門家を活用している。

その流れ自体は否定されるものではない、ということ。一方で、そのまま外部委託しているだけでは肝心の金融機関自体に事業性評価を実現するケイパビリティが蓄積できない。だからこそ、中長期視点で中堅社員を中心に外部のコンサルティング会社に一定期間出向させる、トレーニングの機会を積ませる、など意識的且つ能動的に数年単位の計画で育成する必要があるのだ。

著者のコンサルティング会社でも人材を受け入れ、一定期間OJTで鍛え上げるケースもあれば、座学も含めて断続的に(受講者の本業の合間を縫って)実践機会を積んでもらう場を提供したりしている。

事業性評価の実務における分析手法とは

事業性評価をどう実践するか、についても述べたいと思う。先に述べたように、事業性評価を一定以上の品質で実践するには、相応の知識、スキルと実践経験が必要になる。

その蓄積は場数を踏む以外に代替手段がないとして、とはいえ、状況および対象企業の課題を収集、整理するだけでも見えてくる景色、示唆が違う。まずはこの課題収集・整理の手法を身に付けることが先決である。

SWOT分析は使うな

その際に、よくSWOT分析(Strength、Weaknesses、Opportunities、Threats:強み、弱み、機会、脅威)を使って対象企業の強み、弱みを整理しているケースを見かけるが、これはあまり意味がないのでやめたほうが良い。

SWOT分析はあまり戦略的な示唆が出ない一方で、なんとなく分かった気になるという点で、有用ではないし、ビジネスDDや戦略を立案する上ではほとんど使わないからだ。(ただし、投資家や金融機関への説明の際に用いることはある。)

では、どういった切り口で事業性を評価すれば良いか。

どのような業界、環境(局面)の企業にも適用できるような絶対的なフレームワークはない、ということを前提とした上で述べると、数多くのケースで有用かつ効果的なのは「3C分析」「バリューチェーン分析」「(経営課題に対する)組織・人材ケイパビリティマッチング分析」の3つである。

3C分析とは

3C分析とは「Customer(市場・顧客)」、「Competitor(競合)」、「Company(自社)」の3つの視点で、要点をまとめるフレームワークである。

平たく言えば「Customer:市場はどういう動向で、お客様は何を求めているのか(顧客ニーズ)」「Competitor:(顧客ニーズに対して)競合はどういう商品、サービスを提供し、どのような戦い方をしているのか」「Company:(顧客ニーズ、競合動向を踏まえて)自社の能力、ケイパビリティを鑑みると、自社では何が出来るのか、また何をすれば良いのか」という問いかけになる。

昨今話題の大塚家具を事例に挙げて説明してみよう。同社を3C分析を使ってまとめた場合は、以下のようになる。

表1:大塚家具の3C分析

セグメントコメント
Customer(市場・顧客)市場は人口減少による中長期では需要減。また、消費者はカッシーナやアルフレックスなどの高付加価値(高級)家具を買いたいとする少数の富裕層とニトリ(和風家具)、IKEA(北欧風家具)等の低価格高コスパ家具を求める層に二極化の傾向。かつて中流層が購入していた当社家具セット購入需要(ここでは仮称として中級家具と呼ぶ)は減少の一途を辿っている。
Competitor(競合)上記の通り、高付加価値家具では、カッシーナやアルフレックス、低価格高コスパ家具ではニトリ、IKEA、無印良品等、中級家具の領域ではアクタス。
Company(自社のケイパビリティ)対象企業(大塚家具)は、各店舗に大きな面積を有するショールームを展開、住宅購入などのライフイベントにひも付き家具のセット購入を検討している消費者層を集客し、個別担当者(営業人員)による重点接客をして購入の意思決定に導く、という接客スタイルをとっている。

以上、筆者作成

・3C視点で見た対象企業(大塚家具)にとっての示唆:市場動向及び顧客ニーズ、競合動向を鑑みると、従来型のビジネスモデルでは、現状の規模を保つことは困難であり、本来は高付加価値家具に向かうか、低価格高コスパ家具に向かうか、はたまた他のサービスを組み合わせた新たなモデル構築かの三択であるものの、いずれのビジネスモデル構築を実現するに際しても、現状の売上規模感を実現するためには一定期間を要する。

短期的な利益改善を図る上では、大規模リストラによる規模の縮小及び規模に合わせたコスト構造の実現が不可欠。左記視点で言えば対象企業が打ち出してきた、低価格家具の提供、中古家具の取り扱い、といった諸施策は、中長期的な視点で見れば必ずしも的外れではないものの、現状のビジネスモデルとの併存及び現状売上規模を維持した上で諸施策を実施していること自体は、実現可能性として難しいと言わざるを得ない。

以上が、大塚家具の3C分析である。

3C分析は比較的大きな枠組みのフレームワークだが、競争戦略論において、これだけ万能なフレームはない。まずは事業性評価を行う対象事業について3C分析で概況を整理すると、全体像を掴むことが容易になるはずだ。

次いでバリューチェーン分析について解説する。