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【会計コラム】令和3年度税制改正|電子帳簿等保存制度

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※画像はイメージです

4月は新年度のスタート。制度の新設・改変の多いタイミングですが、税制については、昨年12月21日に令和3年度税制改正の大綱が閣議決定されています。その概要においては冒頭で、『ポストコロナに向けた経済構造の転換・好循環の実現を図るため、企業のデジタルトランスフォーメーション及びカーボンニュートラルに向けた投資を促進する措置を創設するとともに、…(中略)…次のとおり税制改正を行うものとする。』と謳っています。

ポストコロナを待たずとも、新型コロナによりリモートワークが常態化し、外出が制限される中で、飲食のデリバリーやネット配信の浸透、また自動運転技術や遠隔医療の導入等、選択ではなく半ば強制的に、デジタル技術を活用して業務プロセスが変わり、新サービス、新技術の導入が一気に進み始めています。

また政府としても、今年の9月には「デジタル庁」を新設し、行政でのデジタル化を加速する狙いです。政府自らが本気になってデジタル化の推進に取り組む気持ちの表れとして、税制改正においてもその後押しをする措置が織り込まれたのだと思います。

その中で、経理実務に少なくない影響を与えると想定されるのが、電子帳簿等保存制度の見直しです。制度としては1998年に制定された法律で、いわゆるペーパーレス化を進めるものとして領収書のスキャナ保存を認める等、何度かの改正を経ていましたが、結局紙での保存と変わらない、あるいはそれ以上の労力を要することになるため、普及が進まない制度でした。今回の改正は抜本的な見直しと言っているように、その阻害要因が大幅に解消され、使い勝手のいい制度となりそうです。

そこで今回は、電子帳簿等保存制度の改正について解説します。

1.電子帳簿保存制度の概要と改正前の障害

企業は法人税法等の国税に関する法律において、総勘定元帳・仕訳帳等の帳簿や、取引等に関して作成又は受領した書類(以下、「帳簿書類」)を原則7年間(欠損金が生じる年度については10年間)の保存義務がありますが、原則は紙で保存することとなっており、取引の増加とともに紙の証憑が増えるため、電子データでの保存を容認するものとして、1998年に「電子帳簿保存法(通称)」が制定されました。

この電子データでの保存ですが、帳簿書類の性質により、次の3つの類型に分かれます。

 1. 自己が電子的に作成する帳簿書類の電子保存(以下、「1.帳簿書類の電子保存」)
 2.取引の相手方から書面で受け取った請求書等のスキャナ保存(以下、「2.スキャナ保存」)
 3.取引の相手方から電子的に受け取った請求書等のデータ保存(以下、「3.電子取引のデータ保存」)

これらにつき、従来普及が進まなかったのは主に、次のような煩雑な手続きが必要とされたからと考えられます。

・紙から電子データでの保存に変える日の3か月前までに、税務署長に対しての申請が必要(1.2.)
・内部統制要件として、スキャナ対象の書類に受領者が自署した上で3営業日内に読み取ってタイムスタンプの付与が必要、書類原本と電子データの突合作業をする定期検査、2名以上での事務処理による相互けん制が求められる(2.)
・電子取引のデータ保存について、システム上の検索要件として、取引年月日、勘定科目、取引金額その他のその帳簿の種類に応じた主要な記録項目により検索出来ること、日付又は金額の範囲指定により検索できること、二つ以上の任意の記録項目を組み合わせた条件により検索できることが求められる(2.3.)

「1.帳簿書類の電子保存」については、2020年3月時点において税務署による承認件数が約27万件であるのに対して、「2.スキャナ保存」が約4千件に留まっているのは、紙の保存以上に厳しい内部統制要件を満たさなければならなかったためと言えます。

2.今回の改正のポイント

令和3年度の税制改正では、上記の障害を大幅に解決する方向で制度が使いやすなります。

まず、1.帳簿書類の電子保存、2.スキャナ保存ともに、税務署による事前承認が廃止されることで、電子帳簿保存法に対応した機能を備える会計システムやスキャナが準備出来れば、すぐに電子保存に切り替えることが出来るようになります。

次に、2.スキャナ保存の内部統制要件が大幅に緩和され、スキャナ対象の書類への受領者の自署は不要、タイムスタンプの付与が3営業日から最長2カ月以内に延長、定期検査は不要となり、スキャナ後すぐに原本を廃棄可能、また2名以上の相互けん制も廃止して1名での事務作業が可能となりました。

また、2.スキャナ保存、及び3.電子取引のデータ保存について、電子化の3つ目の大きな障害であったシステム上の検索要件は、検索項目が取引の日付、取引金額、取引先に限定されることとなりました。さらに電子取引のデータ保存の場合で売上高1千万円以下の事業者は、検索要件自体が不要となっています。

このうち、企業にとって最も負担が大きかったのが内部統制要件ですが、この負担の大幅な軽減は、電子保存のハードルを大きく下げることになります。

一方で国税側としては、電子帳簿保存の浸透により、紙ベースよりもデータ改ざんが容易に出来ることから、データの改ざん等で修正申告がある場合、従来の重加算税に加えてさらに、本税の10%に相当する金額という重いペナルティを課すことで、企業側をけん制し、バランスを取っています。企業としても、税務上で内部統制要件がないからと言って内部統制の整備を怠ることは許されず、ガバナンスの観点からは、不正や間違いを防ぐ機能を組み込んだシステムの構築と、運用をチェックする体制を整えなければなりません。

なお、今回の電子帳簿保存法の改正は、2022年1月からの施行となります。

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