【会計コラム】消費税が10%に 改めて税について考える

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皆様、こんにちは。ビズサプリの花房です。

消費税が8%から10%に変わり、1ヶ月半が立ち、景気後退を懸念する声がある一方で、その対応策として5%還元や10%還元が叫ばれ、売上を維持拡大しようと、小売り・外食業界の方はしばらくは大変な対応が続くと想定されます。

元々消費税というのは、今後少子高齢化で現役世代の減少とともに減るであろう所得税から、消費全般に薄く広く課税する間接税とすることで税収を維持し、少子高齢化で必要となるであろう社会保障費の財源を確保する目的で導入されています。今では、消費税は社会保障の充実のため、年金・医療・介護・少子化対策に用いるということで、目的税化されています。

改めて税について考える

消費税が最初に検討されたのは1979年の大平内閣まで遡り、財政再建のため「一般消費税」導入を閣議決定したものの、世論の反対を受け、断念しました。その後、消費税が実際に導入されたのは竹下内閣時代の1989年(平成元年)でしたが、そのあおりで竹下内閣は総辞職しました。その後の増税の際も、常に世論からは逆風を受け続けてきたという歴史があります。

消費税だけでなく、そもそも日本人は、税に対して、義務ではあるから仕方なく納税している、本当は払いたくない、と考える方が大半ではないでしょうか?

なぜ、税が必要なのか。これは、国や地方自治体が、共用資産である道路や橋と言った公的インフラや、年金・医療・福祉の他、国民の安全を守るための教育や警察、消防、防衛と言った、公共サービスを提供するためには、財源が必要であり、その財源のベースとなるのが税金である、ということは、高校までの教育で一度は耳にしたことがあるかと思います。

その意味で、程度の差こそあれ、誰もが税金の使途について恩恵を受けているはずなのですが、皆さんが税金を払うことに抵抗があるのはなぜなのでしょうか?

若干古い資料ではありますが、2017年に、東京都税制調査会が外部委託した調査レポート(租税に対する国民意識と税への理解を深める取組に関する国際比較調査・分析等委託 最終報告書)によると、の国民所得に占める租税負担の割合は、他の先進諸国(ニュージーランドの46.2%、フランスの40.7%、ドイツの30.4%等)に比べて低い、24.1%であるにもかかわらず、中間層の税負担に関する意識調査は「高すぎる」という回答が6割を超え、実際に税負担の高い国よりも、意識の上では日本の方が高いと感じる割合が高水準だという結果が出ています。但し、税モラル(税金をきちんと納めなければならない意識)は、調査対象となっている国の中では一番高いようです。

実際の税負担と、負担していると感じる意識(通税感)の逆転現象は、分析によると、納税者が自らの納める税金がどのように使われどのように自らの生活に還ってきているのかを実感し、納得してもらうという「納得感」が足りないことに起因するようです。これを改善するためには、学校での教育だけでなく、自分の将来の給料からどの程度の税金が支払われるのか、社会人になるとともに説明する必要があり、またアメリカと違って組織人は源泉徴収の年末調整の制度によって、自分では確定申告は原則として行いませんが、大目に源泉して必ず年度末に、それぞれ確定申告で還付を受けることにすれば、例えで血税と言われるように、血の滲むような自身の努力から得られた報酬から、どれだけの税金が徴収されているか必然的に意識することとなり、その使い途にも自然に興味がわくと思います。そして選挙権を行使し、血税が大切に使われていることを監視することが、国民の義務だと思います。

税の三大機能の1つとして、所得再分配機能があります。競争を前提とした資本主義経済においては努力した者がより多くの所得を得ることは避けられないことから、ある程度の格差はいたし方ありませんが、行き過ぎた格差は許容されるものではありません。税は所得再配分により、その格差を緩和する調整機能を持っていますから、今回の消費増税がきちんと世代間の格差を解消するように政治を監視することが、まさに今我々国民に求められていると言えます。

文:花房 幸範(株式会社ビズサプリ パートナー 公認会計士)
株式会社ビズサプリ メルマガバックナンバー(vol.105 2019.11.20)より抜粋

参考URL:東京都主税局
租税に対する国民意識と税への理解を深める取組に関する国際比較調査・分析等委託 最終報告書(日本総合研究所、平成29年3月)

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