​ゼビオの東京ヴェルディ買収で早くも減損 そこに経済的意義はあるのか?

alt
Photo by Nathan Rogers on Unsplash

買収と同時に減損されるのれんの経済的意義とは?

買収と同時に全額を減損処理 

「買収後ただちにのれんを減損する」という大変珍しいプレスリリースがゼビオ<8281>から2020年12月25日付で公表されました。

▶特別損失の計上及び通期業績予想の修正に関するお知らせ

スポーツ用品店大手のゼビオは、J2リーグのプロサッカーチーム・東京ヴェルディのスポンサーで、かねてより大量の新株予約権を保有していましたが、長い間行使することはありませんでした。

しかし当該リリースによると、ゼビオはコロナ禍の影響等もあって経営危機に陥っていた東京ヴェルディ救済のため、新株予約権を行使し東京ヴェルディを連結子会社化した一方、同時にのれんの全額を減損処理するとのことです。

のれんとは何か

のれんとは、簡単に言うと時価総額がPBR1倍を超えるときのその超える部分です。

例えば、今期の期首純資産100億円の会社がROE10%、利益とキャッシュフローは金額が一致しており、利益は全額再投資を維持し続けると仮定します。

すると、今期の利益は10億円、来期の利益は(今期首の純資産100億円+今期の利益10億円)*ROE10%=11億円、再来期の利益は(今期首の純資産100億円+今期の利益10億円+来期の利益11億円)*ROE10%=12.1億円、となり、純資産が加速度的に増加していくことになります。

よって、株式市場は、現在の純資産よりも高い値段を株価として付けることとなります。

上記の例でいえば、対象会社の事業リスクに対する市場の要求利回りが15%であり、この会社が無借金経営の会社であるとすると、簡易的なDCF計算で時価総額=現在の利益10億円/(要求利回り15%-想定成長率10%)=200億円となります。

その場合、時価総額200億円に純資産100億円を超える額である100億円がのれんとなります。

しかし、上記の計算からわかるように、のれんは期待を数値化したものにすぎませんから、期待が外れたときは減損処理しなければなりません。

たとえば上記の例で、今期は見込み通りの結果となったものの、今期末にビジネス環境の大変動が発生し、今後期待できるROEは8%になってしまった一方、ビジネスリスクは低下したため市場の要求利回りが12.5%に低下したとします。

すると、今期末時点で下方修正された来期の期待利益は、(今期首純資産100億円+今期利益10億円)*下方修正後ROE8%=8.8億円となり、簡易DCFによる今期末時点での下方修正後の時価総額は来期期待利益8.8億円/(要求利回り12.5%-想定成長率5%)=117億円となります。

そうすると時価総額117億円が純資産110億を超える額は7億円に下がるので、のれんは100億円から7億円に評価替えとなり、93億円の減損処理が必要ということになってしまいます。

このように通常、のれんは期待を込めて付けた値段で実際に何年かビジネスをやってみて、期待が外れたことを確認してから減損されるものなのです。

しかし、ゼビオによる東京ヴェルディの買収では、このように期待を現実化するためのチャレンジ期間を置くことなく、直ちに減損しています。

つまり、ゼビオは初めから価値がないと分かっており、改善の余地もないと想定している会社に高値を付けて買い、割高に買った部分は損失として処理しましたと言っている、ということです。

これはある意味、経済的合理性を見出しがたい取引であり、場合によっては株主に対する背信行為ともとられかねないものです。

本件取引には何らかの経済的合理性があるのでしょうか?

NEXT STORY

2016年決算「上場3,079社の平均年間給与」調査

2016年決算「上場3,079社の平均年間給与」調査

2017/05/29

東京商工リサーチの調査によると、2016年の上場3,079社の平均年間給与は前年より6万3,000円増え、605万7,000円だった。個別企業の平均年間給与では、M&A助言会社のGCAが2,139万6,000円と2年連続で首位を守った。