最近増えている「信託型ストック・オプション」とは

alt
Photo by Maxim Hopman on Unsplash

ビズサプリの久保です。今回は、最近増加傾向にある信託型ストック・オプションについてお話します。

▼信託型ストック・オプションとは

従来のストック・オプションは、その発行時において、誰に何個発行するかを事前に決めておく必要があり、後から交付先や個数を変更することができませんでした。このようなことを実現できるいわば「夢のストック・オプション」が信託型ストック・オプションです。

信託型ストック・オプションを利用すると、在籍者だけでなく、将来採用する役員や社員も対象とし、その貢献度に応じて付与個数を決めていくことができます。

例えば、3年後の利益目標を決め、それを達成したら各人の貢献度に応じてストック・オプションを付与するように設計します。これは役員・社員による目標達成のためのインセンティブとなるだけでなく、これを条件に優秀な人材を採用することもできます。特に3年間で社員数を2倍、3倍にする計画の急成長会社の場合、在籍者へのインセンティブだけでは不十分であり、このストック・オプションのメリットは大きいと思います。

ストック・オプションの個数についても、各人の貢献度に応じて決めることができますので、賞与などの金銭によるインセンティブ報酬と同じような効果が、現金支出なしに実現できる仕組みであるということもできます。

▼信託型ストック・オプションの仕組み

利用する信託は「受益者等の存しない信託」(法人税法2条29号の2ロ)である点が重要なポイントです。信託契約に基づき会社が発行する新株予約権(ストック・オプション)を信託財産とします。信託設定時には受益者(ストック・オプションの交付先)が決まっておらず、時期が来たら会社(受益者指定権者)が受益候補者の中から受益者を指定する契約になっています。

役員・社員等にストック・オプションを直接付与するのではなく、一旦信託財産としておき、業績条件等が確定した時点で会社が受益者を指定すると、信託から、役員・社員等にストック・オプションが付与されるという仕組みです。

次に重要な点は、この信託の当初資金を会社のオーナー個人が拠出する点です。これにより信託が会社から独立したものになります。信託がこの当初資金によりストック・オプションを取得して信託財産とします。その後の信託報酬が毎年数百万円程度かかりますが、これは信託管理人及び受益者指定権者である会社が支払います。

▼役員・社員への所得税の取り扱い

株式を売却した時点で、そのキャピタルゲイン(売却時の株価と権利行使価格の差額)に対して課税(分離課税の場合約20%)されると説明されています。これは税制適格のストック・オプションと同じ扱いになります。

税制非適格のストック・オプションの場合には、権利行使時点において、その時点の株価と権利行使価格の差額について経済的利益を受けたとみなされ、給与所得課税が行われます。給与に対する税率は、凡そ15%から65%であり、キャピタルゲイン(譲渡所得)に対する税率より高いのが普通です。

信託型ストック・オプションの場合には、前述のような仕組みで信託からストック・オプションが交付されるため、給与として課税されることはないと考えられているようです。

ただし、この信託型ストック・オプションについて、税務当局が取り扱いを明らかにしているわけではありません。今後の税務当局の判断によって給与課税が行われる可能性が残されていることに留意が必要です。

NEXT STORY

【商業登記編】上場会社における新株予約権行使登記の注意事項を教えてください

【商業登記編】上場会社における新株予約権行使登記の注意事項を教えてください

2017/10/04

新株予約権行使に伴う登記手続で注意すべき事項について、フォーサイト総合法律事務所の司法書士/行政書士 大越一毅氏が解説します。