皆様、こんにちは。ビズサプリの花房です。
今年4月、上場企業に四半期ごとに開示を義務づけられている四半期報告書について、政府が廃止する検討に入った、とのニュースが流れました。内容的に重複が多いため、企業側の事務負担を軽減することを目的として、四半期報告書を証券取引所の規則に基づく決算短信に一本化する方向とのことです。金商法に基づく開示義務はなくなるものの、四半期開示は維持されるため、一本化された後のボリューム、監査法人によるレビューの要否等で実際の負担軽減にどの程度繋がるか現時点でははっきりしませんが、経理の現場では関心が高くなっています。
そこで今回は、四半期開示制度の変更が予定されていることを機に、上場企業の開示についてあれこれと検討してみたいと思います。
日本において四半期開示が行われるようになったのは、実はここ20年くらいのことです。今年の東証の市場再編によりグロース市場に統合されましたが、その前身の1つであるマザーズ市場が1999年に創設された際、マザーズ上場企業では当初より取引所規則で四半期開示が要求されていました。四半期決算短信が全ての上場企業に拡大されたのは2003年からで、金商法での法定の四半期開示が義務化されたのは2008年からと、意外と新しい制度です。
このように日本で四半期開示が導入されたのは、当時は欧米、アジア諸国では四半期開示が一般的となって来たため、国際間での比較可能性を担保して日本企業の国際競争力を高めることが必要との認識や、企業を取り巻く経営環境の変化が激しい時代となったことで、投資家に合理的な投資判断を促すためには上場会社の経営成績・財政状態の変化等に係る有用な情報を、より高い頻度で定期的に開示されることが適当と考えられたことによるものでした。
それがここに来て見直されている背景として、企業に四半期開示を要求することが、投資家や経営者にとって中長期的な企業の成長よりも短期的な利益を志向することを助長しているのではないか、ということや、作成負荷が働き方改革の流れに反する、といった意見がある他、この10年内に英国やフランス、ドイツで四半期開示の法定義務が廃止されてきた国際的な流れも影響しているようです。
但し、法定の義務はなくなっても、国により大半の上場企業は四半期開示を続けたり、取引所の規則では市場により四半期開示義務を残しているように、日本で現在検討されているのは四半期開示そのものをやめるわけではなく、四半期決算短信と四半期報告書という、一部内容の重複する開示書類を一本化して作成の事務負担等を軽減することを狙ったものになります。
やはり四半期開示そのものをやめてしまうと、情報開示の後退になりますので、四半期開示そのものは維持し、簡易であるがスピード重視の四半期決算短信と、監査法人によるレビューを受けるので時間がかかるが内容がより充実した四半期報告書のいいところを合わせて、バランスの取れた開示内容、開示制度となることを期待したいと思います。
帝国データバンクから「上場企業の監査法人移動調査(2021年上半期)」が発表され、今年は昨年に比べ、監査法人の交代が多くなっていることが明らかになっています。
今回は、本年11月27日に監査法人と公認会計士に対する金融庁処分が発表された東証JASDAQ(スタンダード)上場の日本フォームサービスによる虚偽記載事件についてお話したいと思います。