機関投資家はなぜ「アルヒ」を買い増しするのか

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それでもアルヒ株を買う理由

アルヒの株が買われる理由は、どこにあるのか。

アルヒの株主構成と株主還元策

大量保有報告書の提出状況を見ると、外資系を中心とした機関投資家の保有割合が高くなっている。(→提出状況のデータベースはこちら

保有者名 保有割合 報告日 提出理由
フィデリティ投信 9.80% 2019/03/07 買い増し
レオス・キャピタルワークス 7.98% 2019/04/19 買い増し
JPモルガン・アセット・マネジメント 7.83% 2019/06/20 買い増し
テイムズスクエア・キャピタルマネジメント 7.58% 2019/05/15 買い増し
ティー・ロウ・プライス・ジャパン 7.38% 2019/05/21 新規保有

2019年6月25日現在。M&A online編集部調べ

アルヒは株主を強く意識した経営をしていることが考えられる。その理由は以下の3つだ。

理由1「ROE目標は15%」

一般的に10%以上あれば優良企業と判断されるが、アルヒのROE目標は15%。2019年3月期は19.1%を達成している。

アルヒの外国人持ち株比率は42.5%と高い。外国人投資家は、投資判断としてROEを重視する傾向にあるので、自己資本比率が高いアルヒは投資対象として魅力だ。

アルヒ決算説明資料「2020年3月期業績見通し」
アルヒ決算説明資料 2019年3月期「2020年3月期業績見通し」より

ROE(Return On Equity)とは、自己資本比率のことである。株主が拠出した自己資本を用いて企業がどれだけの利益を上げたか、つまり株主としての投資効率を測る指標だ。計算式は以下の通り。

ROE(%) = 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100

自己資本比率が高い会社というのは、自分が投資したお金を使って効率よく稼いでいる会社だといえる。

理由2「配当性向の目標は30~40%」

さらにアルヒは株主還元として配当も重視しており、配当性向の目標は30~40%である。

配当性向とは、純利益(税引き後利益)から配当金をどれくらい支払っているかをパーセンテージで表したもの。企業が1年間で儲けたお金からどれだけ配当として株主還元しているかは、配当性向を見ることでわかる。

配当性向(%)= 配当金の支払い総額 ÷ 当期純利益 × 100

アルヒの配当性向は目標の30~40%に対し、2019年3月期の配当性向は36.5%。2020年3月期は36.9%を見込んでいる。今期の年間配当は、前期比6円増の50円に増配する方針とした。

アルヒ決算説明資料 2019年3月期「株主還元」より
アルヒ決算説明資料 2019年3月期「株主還元」より

2019年6月25日現在の株価2,070円での配当利回りは2.13%。配当利回りとは、購入した株価に対して1年間でどれだけの配当を受け取るかを示す数値だ。

配当利回り(%)= 1株当たりの年間配当額 ÷ 1株の購入価額 × 100

高配当銘柄の目安となる3%には届かないものの、株主重視の姿勢は外国人投資家や機関投資家に評価されていると考えられる。

理由3「自社株買いを実施」

株主重視の姿勢は、自社株買いの実施にも現れている。2019年3月期の決算発表と同時に50万株(発行済み株数の1.42%)、または8億円を上限として自社株買いを実施すると発表。決算や増配と合わせて好材料視されている。

アルヒは「買い」か

ROE、配当性向など株主重視の経営姿勢が評価され、外国人投資家や機関投資家の買いが入っており、下値は底堅いと推測される。

ただし、現在のPER(株価収益率)は15.17倍と東証一部全銘柄の13.40倍を上回っているので割安感はない。今後は、アルヒのフラット35の不正融資問題に対する強化策がどのようになるかが注目される。

ご注意:当記事の個別の銘柄および企業については、あくまで説明のための例示であり、個別企業の推奨を目的とするものではありません。

文:M&A online編集部

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