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さくら総合リートが合併に反対 初の敵対的買収となるのか?

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※画像はイメージです Photo by Zoltan Tasi on Unsplash

1.J-REIT(不動産投資信託)初の敵対的買収

2019年5月10日に、スターアジア投資法人<3468>の運用会社が、さくら総合リート投資法人<3473>に対して合併提案を行い、注目が集まっています。さくら総合リートがスターアジアからの合併提案に反対し、J-REIT初の敵対的買収劇に発展したからです。

敵対的買収とは、買収者が買収対象企業の同意を得ないで買収を仕掛けることです。J-REITの合併には、企業の株主総会にあたる投資総会での承認が必要。スターアジアは運用会社の変更などを提案し、過半数の同意を得られれば合併を具体的に進めたい考えです。

一方、さくらは合併しないほうがJ-REITの価値向上につながると主張しています。株主総会が開かれれば、両者が支持を争う形になり、J-REIT初のプロキシーファイト(委任状争奪戦)になりそうです。 

2.J-REITの合併には2種類ある

J-REIT(不動産投資信託)の合併には、次の2つがあります。

(1)吸収合併

吸収合併とは、一方の投資法人がもう一方の投資法人を吸収することです。吸収する側が存続法人となり、吸収される側は消滅して上場廃止になります。J-REIT史上初の合併は、2010年2月の東京グロースリート法人とエルシーピー投資法人の吸収合併でした。

この合併による存続法人は東京グロースリート法人で、エルシーピー投資法人は上場廃止となり消滅しました。

(2)新設合併

新設合併とは、合併する2つの投資法人が新たな投資法人を新設し、それまでの投資法人は新設合併消滅法人となり解散するというものです。

3.合併のネックとなる税制度

ただ、これまでの再編は経営難のJ-REITの救済などに限られていました。合併のネックになっていたのは税制です。J-REITの高い分配金の要因として「法人税等が課税されない」点があります。

具体的には、以下の条件を満たすと法人税が免除されます。

1.配当可能利益の90%超を配当していること
2.他社株式の50%以上を保有していないこと
3.筆頭株主の投資口保有比率が50%以下であること

J-REITは他社株式の保有比率が50%を超えると分配金が課税対象になってしまいます。経営権を握るには50%超の取得が必要になるので、TOB(株式公開買い付け)などによる買収を仕掛けるのが難しいのです。

今回のケースは、3%以上の株式保有で総会集会などの提案ができるルールを活用して買収を仕掛けました。(発行済投資口の3%以上の投資口を6カ月前から保有していれば、投資主総会の招集を請求することが可能)。

4.J-REITの割安度はNAV倍率で

今回の敵対的買収の背景には、過熱気味ともいわれている不動産市況に比べて、J-REITの中には投資口価格の低迷が続いているものがあり、割安感が強いことがあります。

さくら投資法人の分配金利回りは5.51%と、J-REIT全銘柄の平均利回り約4%を大きく上回っていました。さらにNAV倍率は0.94倍と1倍を下回っています。

「NAV倍率」とは、不動産を時価評価した純資産価値に対する投資口価格の割安感を表す指標です。株式におけるPBR(株価純資産倍率)と似た指標で、NAV倍率が低いほど割安といえます。

J-REIT全銘柄のNAV倍率の推移は以下の通りです。現在は1倍を少し上回る程度で推移しています。

図:J-REIT全銘柄のNAV倍率の推移(2009年5月~)

NAV倍率の推移(10年間)
出典:不動産証券化協会 マーケット概況「NAV倍率の推移(10年間)」

NAV倍率1倍というのは、現在の株価と純資産価値が一致している状態。1倍以下というのは、保有している不動産をすべて売却しても利益がでるという状態です。ですから、1倍割れは割安感が強いと判断できるのです。

J-REITは2018年以降、右肩上がりの上昇を続けてきましたが、一部の大型J-REITに人気が偏っていました。都心の大型ビルなどを組み入れるJ-REITにマネーが流入したためです。

中小のJ-REITの中には、NAV倍率が1倍を下回り割安に放置されている銘柄もあります。そこでJ-REITが保有している優良な不動産を取得するため、運用会社やスポンサーの意に反し、敵対的買収でもJ-REITを取得しようとする動きがでてきているのです。

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