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「吉野家」に回復の兆し 売却した京樽分を除くと増収に
牛丼チェーン「吉野家」などを展開する吉野家ホールディングスに回復の兆しが現れてきた。2022年2月期第3四半期は、売却した京樽の影響を除くと増収になったという。先を走る「すき家」のゼンショーにどこまで迫ることができるか。
吉野家ホールディングス<9861>の子会社売却が止まらない。同社は2020年2月にレストランチェーンのアークミール(さいたま市)を、2021年4月に持ち帰りずしチェーンの京樽(東京都中央区)を売却したのに続き、2022年3月にファストフード事業を手がけるグリーンズプラネットオペレーションズ(東京都港区)を売却する。
信用調査会社の調べによるとグリーンズプラネットの直近決算期の売上高は約19億円で、アークミール(売上高202億円、売却時)、京樽(売上高285億円、同)に比べると小粒のため、吉野家の売上高に与えるマイナスの影響はあるものの、さほど大きくはなさそう。
一方、当期損益を見ると、グリーンズプラネットは1億9700万円の赤字のため、売却によって利益面では多少ともプラスの効果が生まれる。売却時のアークミールの当期損益は21億1600万円の赤字、京樽の当期損益は4500万円の黒字だった。
吉野家は、コロナ禍で大きく変化した市場環境に対応するため、事業構造の最適化を進めおり、グリーンズプラネットの後も子会社売却が続く可能性は高そうだ。次に白羽の矢が立つのはどこだろうか。
吉野屋はグリーンズプラネットの全保有株を、飲食ブランド開発のフライドグリーントマト(東京都港区)に売却する。株式の保有割合や売却金額などの詳細は明らかにしていない。
グリーンズプラネットは石焼ビビンバ専門店の「石焼ビビンパ」、クレープ専門店の「Lemson's CREPE」、から揚げ専門店の「からあげ鶏ちゃん」、たい焼、たこ焼店の「一口茶屋」、サンドイッチ店の「POTAMELT(ポタメルト)」、ラーメン店の「らーめん亭」、丼専門店のDUNBURY(ドンブリー)などを展開している。
信用調査会社によると同社の設立は2017年8月で、2019年2月期に600万円だった当期利益は、2020年2月期に100万円に減少し、2021年2月期は2億円近い赤字に転落した。
【グリーンズプラネットオペレーションズの業績推移】
2019年2月期 |
2020年2月期 |
2021年2月期 |
|
売上高 |
22億5500万円 |
24億800万円 |
19億200万円 |
当期損益 |
600万円 |
100万円 |
△1億9700万円 |
吉野家の2021年2月期のセグメント情報では、連結子会社15社からなる「その他」セグメントの売上高は79億9800万円で、セグメント損益は5億3800万円の赤字だった。グリーンズプラネットはこのうちの1社となる。
売上高の大きいセグメントである、うどんチェーン店の「はなまる」の売上高は203億6200万円で、セグメント損益は31億6000万円の赤字。海外事業からなる「海外」の売上高は195億3400万円、セグメント利益は5億7500万円だった。
2020年に売却したアークミールは当時「ステーキのどん」「どん亭」「フォルクス」「donイタリアーノ」などのステーキやしゃぶしゃぶのレストラン158店舗を運営。外食産業を取り巻く経営環境が厳しさを増す中、業績が急速に悪化し、債務超過状態に陥っていた。
2021年に売却した京樽は当時、テイクアウトずしのほかに、回転ずしの「海鮮三崎港」、すし専門店「すし三崎丸」など290店舗を運営。コロナ禍の中、テイクアウトやデリバリーなどのニーズの高まっていたものの、当期利益率は0.16%と低位にとどまっていた。
2022年3月に売却を予定しているグリーンズプラネットの次に、売却候補となるのは、どのセグメントだろうか。
【吉野家の2021年2月期のセグメント情報(吉野家、京樽を除く)】
はなまる |
海外 |
その他 |
|
売上高 |
203億6200万円 |
195億3400万円 |
79億9800万円 |
セグメント損益 |
△31億6000万円 |
5億7500万円 |
△5億2800万円 |
文:M&A Online編集部
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牛丼チェーン「吉野家」などを展開する吉野家ホールディングスに回復の兆しが現れてきた。2022年2月期第3四半期は、売却した京樽の影響を除くと増収になったという。先を走る「すき家」のゼンショーにどこまで迫ることができるか。