【希望退職者募集】7月は「焼酎」のオエノンHDなど5社、今年これまでに30社を突破

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50人程度の希望退職者を募る…焼酎など酒類大手のオエノンホールディングス(東京都墨田区の本社)

7月に希望退職者募集を発表した上場企業は、焼酎を中心とする酒類大手のオエノンホールディングス、半導体商社のグローセル、婦人靴のアマガサなど5社あった。2021年は7月末までの累計で31社を数える。前年同期を11社下回るものの、「新型コロナ」前だった2019年の年間件数にほぼ並ぶ高水準で、コロナ禍の収束がいぜん見通せない中、増勢に転じるおそれもある。

ホンダ系の田中精密は130人

希望退職者の募集を発表する動きは4月を境にスローダウンし、4月1社(前年同月は2社)、5月1社(同10社)、6月3社(同9社)にとどまった。ただ、7月は5社に増え、前年同月の6社を辛うじて下回る。

7月の顔ぶれをみると、業種はそれぞれ異なるが、いずれもコロナ禍の影響による事業環境変化を理由にあげる。

募集人員が最も多かったのはホンダ系自動車部品メーカーの田中精密工業。同社と子会社でレース用部品などを製造するタナカエンジニアリング(富山市)に在籍する40歳以上の正規従業員が対象で、130人程度を募る。国内生産拠点の統廃合などと合わせ構造改革を進め、2年連続の赤字からの脱却を目指す。

オエノンホールディングスは50人程度の希望退職者を募る。中核子会社で酒類・食品、医薬品製造の合同酒精(東京都墨田区)、加工用デンプン製造のサニーメイズ(静岡市)に在籍する正社員やシニア社員らを対象とする。

新型コロナ感染拡大で、料飲店向けの酒類が低調に推移する一方、巣ごもりによる家飲み需要の高まりも継続し、売上高はチューハイやチューハイの素、本格焼酎「博多の華」、甲乙混和焼酎「すごむぎ」が伸びている。しかし、世界的な経済活動の再開により、粗留アルコール・コーンなどの原材料価格や重油・ガスなどの燃料価格の高騰を受け、収益環境が急速に悪化しているという。

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光村印刷、5年ぶりの募集

中堅印刷会社の光村印刷は5年ぶりの希望退職者を80人程度募集する。コロナ禍によるイベント・展示会の中止などでチラシ、パンフレット類の印刷需要が減り、厳しい経営環境が続いており、40歳以上の従業員を対象とする。同社は2019年に子会社の新村印刷(東京都千代田区)でも希望退職を実施した。

婦人靴「ジェリービーンズ」を展開するアマガサは10人程度を募るが、今年1月(計画発表は昨年12月)にも同数の希望退職を実施したばかりだ。半導体商社のグローセルはコロナ禍による取扱製品の急激な需要変動に対応し、60人程度の希望退職に踏み切る。

人員合理化の動き再燃も

コロナ禍が直撃した2020年に希望退職者募集を発表した上場企業は少なくとも93社に上り、2019年の2.6倍に急増。60社近くは年後半に集中した。こうした大幅増勢は今年に入ってからも続き、1~3月は21社と前年同期(15社)を4割上回るハイペースだった。

4月以降は一服感が広がっていたが、7月の件数がややぶり返した。新型コロナの感染拡大が止まらない状況下、業種によっては人員合理化の動きがいつ再燃するとも限らない。

◎2021年1~7月に希望退職者の募集を発表した上場企業

企業名 募集人員(期間)、募集結果など
7月 アマガサ 10人程度(8月10日~9月10日)
オエノンホールディングス 合同酒精など子会社2社で50人程度(10月1日~15日)
田中精密工業 130人程度(8月2日~25日)
光村印刷 80人程度(8月6日~31日)
グローセル 60人程度(9月6日~9月24日)
6月 東武鉄道 東武百貨店で200人程度(6月17日~7月15日)→?
中京銀行 定めず(8月2日~20日)
アステラス製薬 450人程度(退職日は12月末)
5月 幸楽苑ホールディングス 50人程度(5月19日~30日)→48人応募
4月 ANAP 20人程度(6月10日~30日)→40人応募
3月 三ツ知 定めず(4月19日~5月14日)→?
五洋インテックス 10人(3月16日~31日)→5人応募
JSR 100人程度(4月19日~30日)→128人応募
フォスター電機 60人程度(3月8日~31日)→37人応募
2月 近鉄グループホールディングス 近畿日本鉄道で(3月1日~24日)→?
ベルトラ 約25人(2月18日~24日)→24人応募
リーガルコーポレーション 100人程度(3月8日~19日)→95人応募
名村造船所 250人(5月6日~21日)→248人
JT 1150人程度(2022年3月末に退職)
ライトオン 40人程度(3月1日~16日)→47人応募
日本金銭機械 60人程度(3月8日~19日)→60人応募
ポプラ 約50人(3月1日~19日)→62人応募
ワールド 約100人(3月9日~19日)→125人応募
エンプラス 定めず(2月16日~3月5日)→49人応募
1月 東京コスモス電機 30人程度(3月1日~12日)→29人応募
佐鳥電機 30人程度(3月15日~31日)→25人応募
IMAGICA GROUP 100人程度(本体10人、子会社90人)→105人応募
三陽商会 150人程度(2月15日~3月5日)→180人応募
ヴィア・ホールディングス 約50人(2月15日~25日)→42人応募
かんなん丸 80人程度(3月1日~10日)→68人応募
シャルレ 定めず(1月13日~29日)→8人応募

文:M&A Online編集部

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