ビデオ会議のZoom「ポストコロナ」にらんで1.6兆円の買収

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるパンデミックに伴う世界的な在宅勤務シフトで急成長しているビデオ会議システム大手の米ズーム・ビデオ・コミュニケーションズが「ポストコロナ(コロナ後)」に向けて勝負に出た。それが「超大型買収」だ。

株式交換で過去最高額の買収に乗り出す

2021年7月18日、ズームはコンタクトセンター向けのクラウドサービスを手掛ける米ファイブ9を買収すると発表した。株式交換による買収額は147億ドル(約1兆6000億円)と、同社が仕掛ける過去最高額のM&Aだ。コロナ下で高騰した自社株を利用した株式交換のため、キャッシュ(現金)は必要ない。

日本ではなじみがないファイブ9とは、どんな会社なのか?同社は2001年の設立で、2014年に米NASDAQ市場に上場した。「コンタクトセンター」サービスを提供し、ズーム同様にコロナ下で業績を伸ばしている。2020年12月期の売上高は前期比33%増の約4億3400万ドル(約478億円)だった。

ファイブ9は「コンタクトセンター」サービスで業績を伸ばしている(同社ホームページより)

同サービスはコールセンターとは異なり、電話だけでなくメールやチャットなど複数の連絡手段で顧客に対応するのが特徴。さらに問い合せの内容や連絡手段に応じて最適のオペレーターを自動で振り分け、顧客とのコミュニケーションを効率化すると同時に対応満足度の向上も期待できるという。

実は両社のトップは「顔なじみ」

2018年には米シスコシステムズでアプリケーション部門の上級副社長だったローワン・トロロープ(Rowan Trollope)氏が、ファイブ9の最高経営責任者(CEO)に就任した。特筆すべきは人間関係。2019年、トロロープCEOはズームのエリック・ユアン(Eric Yuan)CEOと共に、「Neat Bar(写真)」などのズーム用ビデオ会議装置を手がけるNeat.no(ノルウェー・オスロ)の立ち上げに出資者として参加している。

ズーム用のビデオ会議装置「Neat Bar」(ズームホームページより)

ズームとファイブ9のCEO同士の付き合いも緊密で、今回のM&Aもスムーズに運んだようだ。買収後にファイブ9は一事業部門としてズームに組み込まれ、トロロープCEOはズームの社長に就任。ユアンCEOは留任する。

ファイブ9は全世界で2000社超の顧客企業を持っており、ズームとしては顧客も重要な「資産」と見たようだ。ズームはコロナ禍収束後のビデオ会議需要の低迷に備えて、パンデミックに関係なく受注が見込め、自社のビデオ会議技術を活用できる「コンタクトセンター」サービスの買収で生き残りを図る。

文:M&A Online編集部

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