【中小企業のM&A】「後継者不在」「選択と集中」「第二の人生」をキーワードとするM&A成約事例

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写真はイメージです

今回は、顧客向けセミナーや金融機関向け勉強会でリクエストが多い「成約事例」について書いてみたいと思います。

その1、後継者不在の会社のM&A成約

    売手企業(A社)と買手企業(B社)の概要

    A社
    業種:消防設備設計・施工
    売上:約3億円

    B社
    業種:ビルメンテナンス
    売上:約10億円

    【案件成立までの概要】
    A社社長には、1人娘しかおらず、娘夫婦は遠方に在住中。娘婿にも事業を引継ぐ意思がなかったことから売り案件の相談にいたる。B社は、グループ会社内に不動産管理事業や介護事業等多数の事業があり、さらなる事業拡大と他地域への進出ニーズがあった。

    A社とB社はもともと業種が異なっているが、B社の主業種のビルメンテナンス事業は、B社営業エリア内では飽和状態にあったので、今後は他地域への進出を考えていた。今までM&A という手法を利用したことはなかった。地元の地公体から信頼を得ていたA社を囲い込むことによって、地元企業とのJVによる県営、市営住宅のメンテナンス事業への進出を足がかりとして、将来的には同じエリア内での民間企業のビルメンテナンス事業への進出を考え、M&A による買収を決断した。

    その2、選択と集中によるM&A成約

      売手企業(A社)と買手企業(B社)の概要

      A社
      業種:飲食店
      売上:約1億円

      B社
      業種:飲食店多店舗展開
      売上:約8億円

      【案件成立までの概要】
      A社は、不採算事業の売却による財務状況改善ニーズがあった。後継者はいたが、現社長としては自分の代で不採算事業に何とかメドをつけてから親族内承継を行いたいという希望があった。M&Aの手法について説明のうえ、売り案件の相談にいたる。

      B社は、エリア拡大ニーズと新市場への進出を検討していたことより同じ業態であるA社の事業に興味を持ち本件のニーズが合致することとなる。A社とB社の役員面談と店舗見学を実施した結果、B社の購入意欲がさらに強くなり、事業譲渡(賃貸契約・厨房機器・従業員の承継)での基本合意となる。

      その後、店舗に関する不動産賃貸契約の引き継ぎについて、第三者(家主)との交渉が価格面で折り合わず一時は暗礁に乗り上げたが、無事、承諾の回答を得る。後日、従業員への事情説明を実施し全従業員への理解を取りつけ、案件成約のための条件であった全従業員の残留もクリアとなり、最終譲渡契約の締結にいたる。

      その3、第二の人生を見据えてのM&A成約

        売手企業(A社)と買手企業(B社)の概要

        A社
        業種:個人向け住宅メーカー
        売上:約50億円

        B社
        業種:マンションデベロッパー
        売上:約700億円

        【案件成立までの概要】
        地元の優良企業で財務内容も良好であるA社社長のもとには、取引金融機関から売り案件が持ち込まれていた。ただし、社長の本心としては、海外に嫁いでいる娘とのんびり暮らしたいというものだった。娘が海外で行っている事業を手伝いたかったのである。

        B社は、上場会社であり、あらゆるM&Aを常に模索している。A社社長は地元では名士。同県内企業への売却は不可であり、投資ファンドへの売却も視野に入れつつ、交渉を行う。また、売却金額にもこだわりがあり、2社、役員面談まで実施するも基本合意にはいたらず。約1年後に再度面談を行い再度案件受託となった。

        B社は大規模なマンション開発には多数実績あるも、個人向け住宅販売は行っていなかった。また、A社の所在県には未進出なので従来から興味はあったのだが、同業の地場大手マンションデベロッパーが存在することから、マンション開発よりもリスクが小さい住宅販売からの進出を決断。B社M&A担当役員とA社社長が同じ高校の先輩、後輩であることも案件の早期成約に寄与した。

        ・ ・ ・ ・ ・

        これらの事例からわかるように譲渡の理由や、ディールを成約させるまでの道のりは様々、まさに十人十色である。つまり、M&Aのアドバイザーを生業とする者や金融機関には常に「マーケットイン」の視点が求められているのである。今後も世の中の流れを捉え、ニューノーマル(新常態)時代の経営に資するM&Aをユーザーに提供したい。

        文:Antribe社長 小林 伸行(M&Aアドバイザー)

        M&A Online編集部

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