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「靴業界動向」調査

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靴業界の倒産 2016年度も前年を上回る推移

 靴業界の倒産推移を年度(4-3月)別に見ると、2012年度(54件)をピークに、2013年度から再び増勢をたどっている。

 2014年度は40件(前年度比8.1%増)と増加したが、これは卸売業(12→18件)の倒産増が押し上げた。2015年度も45件(同12.5%)と増加したが、これは小売業(11→15件)の増加が押し上げた。2016年度(4-7月)はすでに17件発生しており、年度では2012年度以来の50件台に到達するペースで推移している。

 靴業界では、小売大手の(株)エービーシー・マート(TSR企業コード:294156950、法人番号:2011001033515、東京都渋谷区、東証1部、2016年2月期単体売上高1,741億6,700万円)や(株)チヨダ(TSR企業コード:290456045、法人番号:1011301004381、東京都杉並区、東証1部、2016年2月期単体売上高1,052億6,300万円)など、全国展開する大手が自社ブランドを開発しているほか、インターネット通販の台頭など流通が多様化している。

 靴製造業も卸売業の発注量減少や値下げ要請など、長年培ってきた製造・卸売・小売の分業体制が崩れ、競争力の低下した卸売業・製造業はシワ寄せを受けている。

 かつて百貨店向けに強固な販売チャネルを持っていたシンエイの倒産は、従来型の靴業界の危機を示している。シンエイは百貨店との取引で返品が可能な「委託販売」に頼り、過剰な仕入や出荷を続けて返品による滞留在庫が嵩み、資金繰りが悪化した。

 2016年6月、経済産業省製造産業局の「アパレル・サプライチェーン研究会」がまとめた繊維業界向け報告書の分析構図は「靴業界」にも当てはまる。報告書には、「商品の供給過剰でバーゲンで価格を下げて販売されることが常態となり、それが原価率と品質の低下につながっている」と問題提起している。

「靴業界」は、地場に根付く多くの中小・零細企業が支えているが、資金力が乏しいため設備投資や人材育成が思うように進んでいない。その背景には、業歴の長い企業が多く、後継者問題など新陳代謝の進まない業界の本質的な課題がある。シンエイの倒産に端を発した業界の激震が沈静化の様相を見せない靴業界だが、人口減少やライフスタイルの多様化の中で、従来型の「大量生産、大量出荷」による業界システムは通用しなくなっている。

 消費者の目線に立った商品構成、小ロット品対応など、業界をあげた対策が急がれる。

2016年8月19日東京商工リサーチ「データを読む」より

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