訪問看護ステーションと市場規模 

 私は訪問看護ステーションのM&Aのお手伝いをしている。訪問看護ステーションとは、看護師などが病気や障害を持った人の施設や自宅を訪問し、看護やケアを提供する事業所のことである。現在、訪問看護ステーションの整備は急務であり、ほとんどのエリアで不足している状況である。

 2015年4月1日時点で8,241カ所(一般社団法人全国訪問看護事業協会公表による)が稼働しているが、厚生労働省では20年までに訪問看護ステーションを全国で10,000カ所必要としている。つまり、あと5年間で1,800件の設立が必要ということになる。このことから分かるように、国は今後、「地域」で看護する体制をつくろうとしており、将来的に地域の病院数は減少していくだろうと推察している。

 病院に代わり設立が急務となっている訪問看護ステーションは「医師や看護師ではなくても開業できる医療・介護ビジネス」というのが大きな特徴である。そのため、最近では、参入しようと考え「業界に興味を持った経営者」が多く、訪問看護ステーションの開業コンサルタントも多くなってきた。

 当事務所にも、医療・介護業界参入をM&Aによって考えたいという問い合わせが多い。たしかに看護師・リハビリスタッフ(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)にあてがあるなら、参入に非常に有利な業種かもしれない。

 ただ、考えておかなければならないこともある。訪問看護ステーションは、
・高齢社会の進展に伴って介護業界は必ず伸びる
・保険による支払いのため回収のリスクがない
など、将来性や安定性の面で有利な部分もあるとはいえ、労働集約型のビジネスであり、「人」に依存した業態である。

 訪問看護施設の設立要件では、必要人員基準として看護師(常勤換算で2.5人以上)の設置が必要であり、確保しなければ開業できない。現在、訪問看護ステーションでは看護師不足が深刻化しており、また、転職が日常的に行われているのが現状だ。

 そのため、万一、M&Aによって職員が転職を図り欠員になった場合には人材確保が急務であり、前述の看護師の人員基準をクリアできない場合は、廃業の恐れがある。あまり考えたくない部分かとは思うが、可能性は「ゼロ」とは言えない。

※本記事は、酒詰和幸氏の許可を得てブログより引用、一部内容をM&A Onlineにて編集して公開しております。

文:MTPC代表 酒詰和幸/編集:M&A Online編集部

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