介護業界ではM&Aが盛んに行われている。今回は異業種のM&Aがあるのか、高齢者住宅新聞社の網谷敏数社長に伺う、連載第4回目。前回の記事はこちら

住宅、不動産、警備、保険……。これからも異業種によるM&Aは続く

――今後、介護・高齢者住宅の分野で、M&Aが活発になる業態はあるでしょうか。

 前提として、介護事業者の経営環境が悪化するに伴い、大手異業種によるM&Aは引き続き増えていく可能性が高く、ハウスメーカーや不動産会社、警備会社、保険会社などによる買収が行われるのではないでしょうか。保険会社や流通会社なら全国に販売網が広がり、地方都市であれば顧客の多くは高齢者ですから、ニーズはマッチしています。

 買収先は施設系だけではありません。介護業界は慢性的な人手不足の現状があります。そこで参入企業は、人材を確保するためある程度の規模を堅持する在宅事業者が対象になる可能性もあります。100人の職員を一から採用・トレーニングするのは時間もコストもかかりますが、M&Aなら熟練のスタッフを一気に確保することができます。

 また、既存の介護事業者には、自転車操業的な内情を抱えているところもたくさんあります。施設を開いてすぐに入居者で埋まればいいのですが、半年、1年経っても満室にならないと採算割れの状況に陥ります。ところが、入居者分の売り上げは立ちますから、それを原資に次から次へと施設を新設し、気が付けば止まることができない状況に陥ってしまうのです。ならばと、わらにもすがる思いで異業種と手を組む道を選択する経営者がいても不思議ではありません。後継者不在の問題からM&Aを選ぶ有料老人ホームの経営者もいるようです。

 地域包括ケアを実現するに当たり、病院と介護事業者が連携していく必要があると述べましたが、医療機関こそ介護事業者のM&Aを真剣に考えたほうがよいとも考えています。

 ただし、両者で法人の形態が異なっているなど、医療法人がM&Aに不慣れなところもあり、現状はなかなか進展していません。病床再編が進み、医療報酬の引き下げが懸念される医療機関こそ真剣に取り組んで欲しいと思います。当面はワタミの介護を幕開けに、大手異業種の参入による大型再編第二幕が控えているのではないか見ています。

株式会社高齢者住宅新聞社 代表取締役社長 網谷 敏数氏

 介護事業に民間業者がこぞって入ってきたのは、介護保険法の施行後で、業界の歴史は15年程度と成熟したとはいえないフェーズです。他の業界がそうであったように、介護業界も淘汰の波にさらされるのは宿命ですが、これは異業種が参入するまたとないチャンスであることも意味します。

 ただし、当然ですが、M&Aを行う際は、相手をしっかりと見極めないといけません。最近は、入居者への虐待など悲しいニュースもよく耳にしますが、こういった事業者は人材教育や研修、コンプライアンスに対する意識が不足しているケースが多いのです。経営状況だけではなく、こういった点にも目を配るべきです。トラブルが起きると介護事業だけではなく、本業にも影響しかねないからです。他方、譲渡を考える介護事業者は、こういった点がしっかりしていないと、提携先は見つからないということです。(次回に続く

取材・文:M&A Online編集部