近年、同業同士や異業種によるM&Aが加速している介護業界。介護報酬のマイナス改定などが経営に響き、売却を選択する事業者が少なくないという。そんな業界の経営をめぐる最新の動向、M&Aの実態について、『高齢者住宅新聞社』の網谷敏数社長に伺ってみた。

介護保険法改訂ショック後の業界 中小零細に逆風続く

――最近の介護業界の動向について、過去からの経緯も踏まえて現状をお聞かせください。

 最大のトピックは、2015年4月に実施された、介護報酬のマイナス改定です。その割合はマイナス2.7%というもので、職員の処遇を改善するための「介護職員処遇改善加算」およびサービスの質が一定以上に保たれた事業所を評価するための「サービス提供体制強化加算」を加えると、実質はマイナス4.5%にも達するため、介護事業者の経営環境は一層厳しくなっています(加算分は事業所職員の給与に反映されるため事業者のプラスにはならない)。

 そもそも、中小事業者を中心に介護経営の環境は芳しくなく、東京商工リサーチの調べによると、15年1~9月の「老人福祉・介護事業」の倒産件数は57件と、9月の集計時点で前年の年間件数である54件を上回る勢い。00年に介護保険法が施行されてから、過去最悪のペースで破綻が起きています。

 今回の改定は、地域包括ケアなどの政策に反し、居宅系や在宅介護サービス系に厳しいものとなっているようです。有料老人ホームなど施設系と異なり中小零細の事業者が多く、介護保険への依存度が高いため、影響が大きいのです。売上高に対して介護保険収入の占める割合が8~9割に及ぶ事業者も少なくありません。中小零細が多いため資金力も乏しく、倒産リスクも高いと言えるでしょう。

 他方、施設系事業者の場合は、管理費や食費、生活支援のサービスなど介護保険以外の売り上げが入ってきますから、介護保険収入の割合はさほど高くなく4割程度に抑えられており、収益構造が異なります。

 厚労省は、25年をめどに、重度の要介護状態になっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続けることができるよう、住まい・医療・介護、予防・生活支援が一体的に提供される「地域包括ケアシステム」の構築を目指しており、それには在宅サービスの充実は必要不可欠です。ところが、今回の報酬改定は在宅系サービスに厳しく、矛盾を感じざるをえません。デイサービスの中には、お茶を飲んで過ごすだけのようなところもあれば、介護保険の加算対象となる口腔ケアや体操を行うなどリハビリに特化した場所もあります。これらを区別することで適切なものは残し、そうでないところは淘汰したいという考えがあるのかもしれません。(次回に続く

取材・文:M&A Online編集部