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経済産業省「グループガバナンスガイドライン」に見る 事業ポートフォリオマネジメントの考え方

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3. 子会社経営陣の指名・報酬の在り方

PMIにおいて、子会社経営陣の報酬プランはインセンティブ設計の一環として極めて重要であることから、これをテーマとするグループガイドライン第5章も重要である。「現状、地域間の報酬水準格差や子会社化に至る経緯等により、グループとしての報酬政策に必ずしも統一性がないまま報酬が決定されるケースも少なくないと指摘」されている中で、グループガイドラインは、グループ全体での統一的な報酬政策の構築が重要とする(5.4.1)。

他方で「特に、海外子会社の経営陣の報酬水準が本社のトップを上回る「逆転現象」を問題として指摘する企業も少なくない」という現状を踏まえて、「中長期的には、グローバルな報酬水準及びその考え方を統一していくことを目指すことが期待される」とする(5.4.2)。

海外子会社経営陣のリテンションの観点からはここで指摘するような「逆転現象」により海外子会社経営陣の報酬ばかりが高額であることもやむを得ないと一般に考えられていたところであるが、グループガイドラインがそれを直ちに是とせず、中長期的にはグローバルな報酬水準への統一を目指すとしたことは、ひいては、日本国内にある本社経営陣報酬の報酬水準をグローバルレベルに嵩上げさせることを意味しており、印象的である。

4. 最後に

これまで、M&Aの実施は、公開買付けや経営統合などの上場会社を対象会社とする案件を除けば、買収する場合も売却する場合も、経営陣の自由な経営判断とされ、コーポレートガバナンス上の規律が議論される機会が少なかった。しかし、「事業ポートフォリオマネジメント」が、CGコードで明記され、かつ、グループガイドラインでその詳細が論じられたことにより、コーポレートガバナンス論議の本丸の一つとなったことで、いよいよM&Aもコーポレートガバナンスの議論に取り込まれて来たように感じる。

グループガイドラインの事業ポートフォリオマネジメントの考え方は、その浸透を通じて、多くの企業のM&A、それも特に既存事業からの撤退を行うためのカーブアウトM&Aを推進、加速させるものとなるだろう。

文:柴田 堅太郎(弁護士)

参考

・グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針(ニュースリリース)
https://www.meti.go.jp/press/2019/06/20190628003/20190628003.html

・グループ・ガバナンス・システムに関する実務指針(本文)
https://www.meti.go.jp/press/2019/06/20190628003/20190628003_01.pdf

・グループ・ガバナンスの強化と持続的な企業価値の向上に向けて(エグゼクティブサマリー)
https://www.meti.go.jp/press/2019/06/20190628003/20190628003_02.pdf

柴田 堅太郎 (しばた・けんたろう)

所属弁護士会
第一東京弁護士会・2001年登録(司法修習54期)
ニューヨーク州弁護士・2007年登録

取扱分野
M&A、組織再編、ジョイントベンチャー、ベンチャーファイナンス、コーポレートガバナンス、 敵対的買収防衛、株主総会指導、企業の支配権獲得紛争などのコーポレート案件、コンプライアンス、労務問題、企業法務全般

柴田・鈴木・中田法律事務所 HP
http://www.ssn-law.jp/


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