9月までに本当に届くのか「ファイザーのワクチン」 

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写真はイメージです

16歳以上の日本国民(約1億1000万人)全員分の新型コロナウイルスワクチンを、2021年9月までに確保できる見通しとなった。

菅義偉首相が米国の製薬会社ファイザーのアルバート・ブーラCEO(最高経営責任者)に、同社製ワクチンの追加供給を要請し合意に達したもので、菅首相は「9月までに供給のめどが立った」と安堵の様子を見せる。

日本のワクチン接種率は1%にも満たず、米国や英国、イスラエルなどの世界の国々から大きく後れを取っており、合意が実現すれば一気に接種率の上昇が見込まれる。

ただファイザー製ワクチンの輸入にはEU(欧州連合)の承認が必要で、日本の思惑通り承認がとれるのかは不透明。それでもワクチン供給契約を結んでいる英アストラゼネカや米モデルナと比べると、これまでのところスケジュールに大きな修正がなかっただけに、期待は高まる。ファイザーのこれまでの動きを見てみると。

試される日本の交渉力

ファイザーは2020年3月17日ドイツのバイオテクノロジー企業BioNTechと共同で、新型コロナウイルスワクチンの開発に着手したと発表。その4カ月半ほど後の7月31日に、2021年から1億2000万回分(2回接種で6000万人分)を日本に供給することで厚生労働省と合意した。

日本での臨床試験は10月20日に始まり、12月18日には新型コロナウイルスワクチンの製造販売承認を厚労省に申請。年が明けた2021年1月20日には、これまでよりも2400万回分多い1億4400万回分(同7200万人分)を2021年中に日本に供給することで厚労省と合意した。

承認申請から2カ月近くたった2月14日には、日本での製造販売に関する特例承認を取得し、この承認に基づき2月19日にDHLグローバルフォワーディングジャパンとANAが新型コロナウイルスワクチンをベルギーから日本に輸送し、医療従事者からワクチン接種が始まり、現在は高齢者を中心に接種が行われている。

この間3月31日には、12~15歳を対象にした第3相臨床試験で100%の発症予防効果が確認できたことや、4月5日には2回目接種から最長6カ月後まで高い有効性が保持されることなどを発表している。

日本政府はファイザーからの追加供給量を公表していないが、1億1000万人分の全量をファイザーが供給するとなると、3800万人分の追加供給が必要となる。加えて、供給時期が当初の2021年中から2021年9月までと3カ月前倒しとなっており、ファイザーには一層の供給量アップが求められる。

ファイザーは、欧米諸国はもちろん世界各国と供給契約を結んでおり、日本との数量や時期の変更は、急激な供給力の増強がなければ他国への供給計画に影響を及ぼす可能性が高い。

9月までに1億1000万人分のワクチン調達にはEUの承認、各国の合意など乗り越えなければならない課題が少なくない。ファイザーの取り組みはもちろん、日本政府の交渉力なども試されることになりそうだ。

【ファイザーのワクチンの開発状況】

2020年3月17日 ファイザーとBioNTechが新型コロナウイルスワクチンの共同開発に着手
2020年7月31日 2021年から1億2000万回分を日本に供給することで厚労省と合意
2020年10月20日 日本で第1/2相臨床試験を開始
2020年12月18日 新型コロナウイルスワクチンの製造販売承認を厚労省に申請
2021年1月20日 2021年に1億4400万回分を日本に供給することで厚労省と合意
2021年2月14日 日本での製造販売に関する特例承認を取得
2021年2月19日 DHLグローバルフォワーディングジャパンとANAが新型コロナウイルスワクチンをベルギーから日本に輸送
2021年3月31日 12~15歳を対象にした第3相臨床試験で100%の発症予防効果を確認
2021年4月5日 2回目接種から最長6カ月後まで高い有効性を確認
2021年4月18日 2021年9月までに16歳以上の全国民分(約1億1000万人)を供給することで合意

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