中小企業M&A実務に影響する「令和4年度税制改正大綱」

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中小企業M&A実務へ影響しそうな「これは知っておくべき」令和4年度税制改正大綱

令和3年12月10日公表の令和4年度税制改正大綱(以下、大綱という)の内容で、中小企業M&A実務へ影響しそうな「これは知っておくべき」点をご紹介します。

これだけは知っておくべきM&A実務のポイント

1.ローン控除

適用期限が令和7年12月末まで4年延長されることに伴い、合計所得金額2,000万円(従前:3,000万円)超の者(一部例外あり)には適用不可となります。

(M&A実務への影響)株式譲渡所得の発生により適用不可となる可能性があります。

2.完全子法人株式等・1/3超保有株式等の配当に係る源泉徴収

100%親会社や配当を行う法人の発行済株式数の3分の1超を保有する法人向けに配当を行う場合には、所得税の源泉徴収が不要となります(現行では所得税の源泉徴収が必要です。施行時期:令和5年10月以後に支払を受けるべき配当から)。

(M&A実務への影響)M&A前後で100%親会社等向けに配当を行う際に注意が必要です。

3.不動産の売買契約書に貼る印紙の軽減税率

適用期限が2年延長され、令和6年3月末までの作成分まで継続されます。

(M&A実務への影響)M&A時などに、不動産売買契約書を作成する際に注意が必要です。

4.グループ通算制度離脱時の子会社株式の簿価修正

グループ通算制度適用グループがM&Aにより譲渡企業の株式を取得し、その子会社となった譲渡企業を株式譲渡により売却する場合に、株式取得時の「のれん代」相当(*詳細は大綱P67,68にあり)を子会社株式の原価に加算できる取扱いが設けられます。

(M&A実務への影響)グループ通算制度では、グループの子会社を譲渡する際に、税務上の子会社株式を子会社の純資産(資本金等+利益積立金)に合わすよう簿価修正を行う必要がありますが、これに子会社株式取得時の「のれん代」相当を加えられることにより、従前の連結納税制度に比べ不利になるといわれていた取扱いが是正されることになります。

令和4年度税制改正大綱まとめ

 その他、実務上把握しておくと良いと思われるものをまとめました。

●令和4年度税制改正大綱(一部)

令和4年度税制改正大綱(一部)
©筆者作成

今後の方向性としての記載があったもの

それぞれ、大綱に以下のような記載があります。現時点で詳細は不明ではありますが、今後の改正動向に要注目です。

金融所得課税(大綱 P.9)

・税負担の公平性を確保する観点から、金融所得に対する課税のあり方について検討する必要がある。 

相続税・贈与税のあり方(大綱 P.11)

・現行の相続時精算課税と暦年課税のあり方を見直すなど、(中略)本格的な検討を始める。
・贈与税の非課税措置は、(中略)そのあり方について、格差の固定化防止等の観点を踏まえ、不断の見直しを行っていく必要がある。

文:村木 良平(税理士)

参考URL:令和4年度税制改正の大綱(財務省)

村木 良平 (むらき・りょうへい)

税理士
1975年7月 大阪府生まれ
大阪府立北野高等学校、同志社大学経済学部卒業
株式会社日本M&Aセンターで12年間、M&A案件を主に税務・ストラクチャー構築面から関与。関与案件は千件以上にのぼる。MVP賞、社長賞等受賞。同社コーポレートアドバイザー部(西日本)の責任者を5年間経験後、2021年に独立。税理士会や各実務者向けの講師も数多く行う。
税理士業務、経理・財務・社会保険実務全般、上場準備、上場後の開示実務、J-SOX、国際税務含めた税務実務、上場企業同士の再編実務、PMI等を経験。

著書『中小企業M&A実務必携税務編』(きんざい、2016年・2018年)
*改訂版として『中小企業M&A株式譲渡の税務』を2021年10月に発刊

公式サイト https://murakitax.com


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