上場廃止の理由で一番多いのはM&Aに関連するもの しっかり学ぶM&A基礎講座(68)

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上場廃止銘柄とその理由を閲覧するには

日本取引所グループのホームページで「上場廃止銘柄一覧」のページを閲覧すると、直近の上場廃止銘柄の一覧を時系列で確認することができます。一覧には銘柄名のほか、上場廃止日、証券コード、市場区分、上場廃止理由が掲載されています。

・「上場廃止銘柄一覧」(日本取引所グループHP)

https://www.jpx.co.jp/listing/...

参考までに、近年の上場廃止理由を無作為にピックアップしてみると、「完全子会社」、「株式の併合」、「株式等売渡請求による取得」、「合併」、「民事再生手続き」、「申請による上場廃止」、「有価証券報告書提出遅延」、「会社更生手続き」、「内部管理体制等について改善がなされなかったと当取引所が認める場合」などの理由が並んでいます。

上場廃止理由は後ろ向きなものばかりではない

先ほどピックアップした上場廃止理由の中に「内部管理体制等について改善がなされなかったと当取引所が認める場合」というものがありました。これは、上場廃止基準のうち「特設注意市場銘柄」に関連するものです。特設注意市場銘柄というのは、上場廃止になる程ではないもの、企業の内部管理体制の改善が必要と判断された銘柄を指します。

特設注意市場銘柄に指定されたにもかかわらず、内部管理体制について改善が見られなかったと取引所が認めた場合などには上場廃止基準に抵触することになります。

以上のように、上場廃止理由をピックアップしてみると、必ずしも後ろ向きな理由だけでなく、M&Aに関連して上場廃止となった事例が多いことに気付きます。割合でいうと、むしろM&A関連が大半を占めているともいえるのです。

なお、M&A関連でも後ろ向きな上場廃止基準がない訳ではありません。「合併等による実質的存続性喪失に係る上場廃止基準」と呼ばれるものです。これは、非上場会社が上場会社と合併などを行うことによって新規上場審査を免れる、いわゆる「裏口上場」を防止するための基準となっています。

文:北川ワタル

北川 ワタル

経歴:2001年、公認会計士2次試験合格後、監査法人トーマツ(現有限責任監査法人トーマツ)、太陽監査法人(現太陽有限責任監査法人)にて金融商品取引法監査、会社法監査に従事。上場企業の監査の他、リファーラル業務、IFRSアドバイザリー、IPO(株式公開)支援、学校法人監査、デューデリジェンス、金融機関監査等を経験。マネージャー及び主査として各フィールドワークを指揮するとともに、顧客セミナー、内部研修等の講師 、ニュースレター、書籍等の執筆にも従事した。2012年、株式会社ダーチャコンセプトを設立し独立。2013年、経営革新等支援機関認定、税理士登録。スタートアップの支援からグループ会社の連結納税、国際税務アドバイザリーまで財務会計・税務を中心とした幅広いサービスを提供。

学歴:武蔵野美術大学造形学部通信教育課程中退、同志社大学法学部政治学科中退、大阪府立天王寺高等学校卒業(高44期)

出版物:『重要項目ピックアップ 固定資産の会計・税務完全ガイド』税務経理協会(分担執筆)、『図解 最新 税金のしくみと手続きがわかる事典』三修社(監修)、『最新 アパート・マンション・民泊 経営をめぐる法律と税務』三修社(監修)など

北川ワタル事務所・株式会社ダーチャコンセプトのウェブサイトはこちら


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