製造販売承認を申請したJ&Jの新型コロナ向け「ウイルスベクターワクチン」ってどんなもの?

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写真はイメージです

米国の製薬会社ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J、ニュージャージー州)が5月24日に、1回の接種で済む新型コロナウイルスワクチンの製造販売承認を厚生労働省に申請した。

同ワクチンは、新型コロナウイルスの遺伝子を体内に入れるベクター(運び屋)として無害化した風邪などのウイルスを用いるもので、ウイルスベクターワクチンと呼ばれる。体内に入った遺伝子から新型コロナウイルスのたんぱく質が作り出されることで免疫力が得られる。

5月21日に日本での特例承認を取得した英国の製薬会社アストラゼネカ製のワクチンと同じ仕組みで、すでに接種が始まっている米ファイザー製や、米モデルナ製のメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンとはタイプが異なる。

アストラゼネカと同様に、接種後に血栓症発症の報告があるが、ウイルスベクターワクチンと血栓症との関係は明確ではない。J&Jのワクチンとはどのようなものなのか。

風邪のウイルスを使用

J&Jのワクチンで用いられているベクターは風邪の症状を引き起こすアデノウイルスで、風邪の症状が出ないように改変してある。このウイルスに新型コロナウイルスの遺伝子の一部を組み込み、体内に入れると、ウイルスが細胞内に入り込み、内部で新型コロナウイルスのたんぱく質を作り出す。

このたんぱく質を異物(抗原)と見なし、異物を攻撃するたんぱく質(抗体)が作られる。本物の新型コロナウイルスが侵入した際には、抗体が新型コロナウイルスを攻撃することで、感染を防ぐことができる。

同ワクチンを用いた海外での臨床試験では有効性と安全性が示されており、日本で行った20歳から55歳までの健康な成人と、65歳以上の高齢者の合計250人を対象にした第1相臨床試験でも有効性と安全性が確認できた。

マイナス20度Cで2年間、2〜8度Cで最低でも3カ月間安定して保管できるため、これまでのワクチン流通経路が利用でき、新たな流通設備の構築が必要ないという。

米国で緊急使用が認められているほか、欧州連合(EU)でも承認を受けている。日本政府は同ワクチンの調達契約を結んでいないが、J&Jによると厚労省の製造販売承認が得られれば、2022年初頭にワクチンを供給できる可能性があるとしている。

アストラゼネカはチンパンジー由来

アストラゼネカの新型コロナウイルスワクチンは、複製できないように処理したチンパンジー由来のアデノウイルスを用いる。新型コロナウイルスの表面にある突起状のたんぱく質(スパイクたんぱく質)を作り出す遺伝子を組み込んでいる。

厚労省は特例承認したものの、副反応として血栓症が報告されていることから、当面は公的接種の対象から外すとしている。

ファイザーとモデルナのワクチンは、たんぱく質を生成するための情報を運ぶ遺伝子であるmRNAを用いる。新型コロナウイルスのたんぱく質を作り出すmRNAを体内に入れ、mRNAが作り出したたんぱく質(抗原)を攻撃するたんぱく質(抗体)ができることで、本物の新型コロナウイルスが侵入した際に感染を防ぐことができる。両ワクチンとも血栓症の報告はなされていない。

文:M&A Online編集部

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