事業環境や社内風土、採用戦略も違うため、次世代リーダーが育っていない理由を一概に述べることは難しいですが、様々なお客さまとのお話のなかでは、次のような課題感が背景として存在することが多いです。
・次世代リーダーに求められる経験の不足(エンパワーメントが進んでいない)
日本の人口ピラミッドを見てみると、30~40代人口が少ない一方で、50代人口が多くなっています。そのため、 30~40代で事業を任される経験をしている方は少ない傾向にあります。
30~40代では現場のオペレーションマネージャーとして活躍する方が多く、ファイナンスや事業マネジメントの視点に欠けるという現実があります。リーダーには事業マネジメントの経験が必須です。強力にエンパワーメントを進めていかないと、オペレーション人材からの脱却も実現できません。
しかしながら、未熟な部分の残る30代~40代に事業マネジメントをいきなり任せることもできません。組織には、エンパワーメントとサポートの両軸を整備していくことが求められます。
・イノベーションへの感度が低く、視座も低い
「高度経済成長時代につくられたビジネスモデル・勝ちパターン」で成長してきていることもあり、技術主義・製品主義の価値観のまま、時が止まっている組織も多々見受けられます。
社員のマーケティング思考が足りておらず、マーケットや顧客のニーズをつかみきれないまま商品開発が進められていたり、営業活動がなされていたりします。経営層がサービスモデルへの転換を発信していても、風土や文化が変わらなければ、組織のイノベーションはもちろんのこと、個人のマインドチェンジもなかなか起きないものです。
状況を打破するためには、「個人の内発的な動機を引き出す」→「組織としてチャレンジの奨励・支援体制を作る」→「実行とフォローアップ」というステップを確実に踏ませる必要があります。チャレンジが成功体験となると、人はチャレンジすることに前向きになります。この経験を積ませることで、イノベーションマインドが醸成され、情報感度が高まります。
・組織へのエンゲージメントが低い
トップダウン型の組織風土では特に、経営層がどのような思考プロセスで意思決定をしたのかを社員が知るのは難しいのが現状です。また、役員会が儀式として形骸化しているようでは、社員の会社への信頼は醸成されません。
組織によっては、役員会議の様子を社員に開示しているところもあり、経営層がどのようなディスカッションをしているのか、どのような思いで会社を経営しているのかがわかるようになっています。このような透明性が、社員の会社への信頼感・エンゲージメントにも繋がります。
経営層がしっかりと現場や社員のところまでおりてくる、そして社員からは現場起点のイノベーションを提案していくという「創発型経営戦略の実現」が求められます。 会社の意味や意義を、ホールシステムアプローチを用いて、パーパスで示していくことも施策の一つとして挙げられます。
その他、注意すべき点として「学習性無力感」も大きな問題です。チャレンジが成功体験に繋がらないことが続けば、「どうせ言っても変わらない」というバイアスに陥り、チャレンジすらしなくなります。
中国企業の経営者を紹介するシリーズ。今回は、ハイセンスグループ(海信集団)の周厚健(ヂョウ・ホウジェン)会長を取り上げる。