TikTok(ティックトック)という中国発のアプリをご存じだろうか。15秒から1分ほどの短い動画を作成・投稿できるプラットフォームで、日本でも2017年からアプリ配信を開始した。

2018年に10代、20代の若年層を中心に大流行し、同年の新語・流行語大賞でTikTokがノミネートされるまでになった。日本のApp Storeで配信されている無料アプリの2018年のダウンロード数ランキングでは、LINEやグーグル・マップなどの代表的なアプリを抑え、TikTokが1位となった。

TikTokの開発・運営する会社は「バイトダンス(ByteDance/字節跳動)」。TikTokは元々、中国国内のみで配信していたアプリだった。このバイトダンスの創業者で、現CEOの張一鳴(チャン・イーミン)を紹介する。

フォーブスが毎年発表している「中国の富豪ランキング2019版」によると、張一鳴は第10位にランクインしている。

自由な雰囲気の家庭で育つ

1983年、張一鳴は福建省で生まれた。父親は、広東省で電子部品工場を始める前は、科学技術委員会で働く市の公務員で、母親は看護婦だった。他の公務員の家庭とは異なり、張一鳴の両親は新しいことを試すのが大好きで、子どもにも小さい頃から自分の人生は自分で決めることを望んでいた。張一鳴の幼少時代、両親がいつも話していたのは海外にいる友人たちのことだったという。

中学では化学の成績が非常に良かった半面、化学実験が苦手だったという。実験の授業では危険を回避するため、決まった手順が重視される。それが退屈に感じた。南海大学では、LSI(大規模集積回路)に代表されるマイクロエレクトロニクス(微細電子工学)を勉強しようと決めた。その後、ソフトウエア工学に専攻を変える。

連続起業し、2012年にバイトダンスを設立

張一鳴は2005年に南海大学を卒業すると、3人のチームを結成し、企業向けにIAM(IDとアクセスの管理)システムを開発した。しかし、当時の中国には需要がなく、一度目の起業は失敗に終わってしまった。

2006年、今度は旅行検索サイトの「Kuxun(酷訊)」に就職する。 Kuxun最初のエンジニアとして、研究開発を担当。1年後には技術部シニアマネージャーになり、最終的には技術部のトップになった。管理職になると、大企業のマネジメントを学びたいと思い立ち、2008年にKuxunを離れて、マイクロソフトに転職する。

2009年、張一鳴は不動産検索エンジンの「99fang(九九房)」を設立する。わずか6カ月間に、不動産関連の5つのスマートフォン向けアプリを立ち上げる。

2012年、99fangのCEOを辞任すると、「バイトダンス(ByteDance)」を設立した。早速、「Toutiao(今日頭条)」というスマホアプリをリリースしたが、1000万人ユーザーを獲得するまでに90日しかからなかったという。Toutiaoの他にも、TikTok(ティックトック)をはじめとする様々なスマホアプリを開発し、配信している。

簡単なプログラムから大きな価値が生まれる

Kuxunで働いていた頃、忘れることのできない経験をしたという。出張先から帰るための列車の切符を予約したかったが、当時は駅で切符を買うのは難しかった。ネット上でも切符が取引されていたが、いつ売り手が現れるのか分からなかった。Kuxunが当時行っていた検索では、ユーザーが中古のチケット情報をリアルタイムで検索するためには、たくさんの情報を入力する必要があり、手間がかかった。

そのため、張一鳴は昼食時間を使って簡単なプログラムを作成し、プログラムで自分のニーズを保存すると、インターネット上で、自動的に定期的に検索できるようにした。さらに、検索結果が自分のニーズにヒットしたら、携帯にショートメールが届くようにした。

このプログラムを書いてから30分も経たないうちに、ショートメールを受け取り、チケットを購入することができたという。パソコンの前にずっと待つ必要はなかったのだ。簡単なプログラムだったが、これは張一鳴にとって非常に価値があるものになり、後のビジネスにおいて開発上の大きなヒントになったという。(敬称略)

文:M&A Online編集部