新型コロナウイルスの影響で需要が高まっている宅配便市場。中国では、米国のフェデラル・エクスプレス(FedEx)やユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)などの外資系物流大手、国有の郵政グループを除くと、順豊エクスプレスは大手の民間物流企業の一つに数えられる。今回は順豊エクスプレスの創業者で、現総裁の王衛を紹介する。

フォーブスが毎年発表している「中国の富豪ランキング2019版」によると、王衛は第11位にランクインしている。

香港と広東省の往復から運送業を始める

1970年、王衛は上海に生まれた。父親は空軍のロシア語翻訳の専門家、母親は大学教授だった。王衛が7歳の時、一家は香港へ引っ越す。高校を卒業した後、王衛は大学進学をせず、叔父の商売を手伝うことにした。王衛の本籍は広東省仏山市順徳区にあり、広東省で染色工場の手伝いを始めた。

1980年代から1990年代にかけて、多くの香港人が広東省に工場を設立し、事業を行い、このビジネスモデルが大いに成功していた時代だった。王衛の手伝っていた会社でも、広東省の染色工場から、顧客がいる香港にサンプルを送付していた。しかし、当時はこの運送がなかなか難しい時代で、また、その運送にかなり時間がかかるという問題があった。

運送を自分でやってみたらどうだろう、と考えた王衛は毎日、リュックサックとスーツケースを持ち、香港と広東省の往復を始める。1990年代初め、香港と広東省の間を頻繁に往復していた王偉は、他の工場経営者からも、荷物の持ち込みや持ち出しを依頼されることが増えてきた。

そこで王衛は、父親から資金を提供してもらうと、複数のパートナーと協力し、1993年、順豊エクスプレスを設立した。王衛は22歳。設立当時、6人の従業員でスタートした。

貨物ジェット機を使用する初の民間物流会社へ

2002年に、順豊エクスプレスは正式に運送業の資格を獲得すると、深圳に本社を設立する。2003年には航空機での運搬に目を向ける。そして、揚子江快運航空(現、金鵬航空)と提携し、順豊エクスプレスは中国で最初の貨物ジェット機を使用する民間物流会社となる。2010年までに、順豊エクスプレスの従業員数は8万人を突破し、年間平均成長率は50%を遂げた。

王衛が会社を始めた目的は、ただお金を稼ぐことではなく、何かをやりたいと強く思っていたからだという。順豊エクスプレスは、リーマンショックの際も、配達を行う従業員たちを解雇しなかった。

物流の統合サービスプロバイダーへ

順豊エクスプレスは、物流の統合サービスプロバイダーを自任する。ビッグデータ分析とクラウドコンピューティングの技術を利用し、在庫管理、売上予測、財務管理などのソリューションのパッケージを顧客に提供している。

近年はスマート物流を実践中だ。AI(人工知能)を使い、航空ネットワーク、地上での車や貨物列車によるネットワークなどを最適に組み合わせ、戦略的かつ円滑な物流オペレーションを遂行している。日本には2011年に日本法人「SFエクプレス・ジャパン」を設立し、国際宅配業務を手がけている。(敬称略)

※本連載は今回で終わりです。

文:M&A Online編集部