今回は、中国を代表する医薬品会社、江蘇恒瑞医薬グループの会長である孫飄揚と、その妻である翰森製薬グループ会長の鐘慧娟を紹介する。

フォーブスが毎年発表している「中国の富豪ランキング2019版」では、アリババのジャック・マー(馬雲)、テンセントのポニー・マー(馬化騰)が1位、2位を占める中、孫飄揚は第4位にランクインしている。

中国人の所得増加によって、ヘルスケア関連の消費も増えてきており、孫飄揚率いる江蘇恒瑞医薬グループも業績を伸ばしてきている。孫飄揚の妻である鐘慧娟が率いる翰森製薬グループが香港市場に上場したため、その分、妻の資産が大きく増加した。

一介の技術者から経営トップに上りつめる

江蘇恒瑞医薬は1970年に江蘇省連雲港市に設立された。前身は連雲港製薬工場と呼ばれていた。連雲港は黄海に面した街で、貿易港があり、経済技術開発区の一つでもある。海辺はリゾート地としても開発されている。(余談だが、筆者は昔、連雲港のビーチで泳いだことがある。ビーチは有料で、当時は外国人観光客が多かった)

1997年、正式に江蘇恒瑞医薬として会社登記されると、2000年には上海証券取引所に上場した。同社は抗がん剤治療薬などで業績を伸ばし、中国最大級の製薬会社の1つに成長した。

孫飄揚は1958年、江蘇省の淮安市で生まれた。中国薬科大学、南京大学などで学んだ後、江蘇恒瑞医薬の前身である連雲港製薬工場で、技術者として働き始める。その後、同工場の部長に昇進すると、副工場長、工場長などを歴任。最終的には江蘇恒瑞医薬の会長にまで上りつめる。

孫飄揚は中国の政府機関や研究機関との良好な協力関係の確立し、新製品の開発を推し進めた。抗生物質、抗がん剤、精神治療薬、内分泌系治療薬、消化器系治療薬などの30種類を超える新薬の開発と生産に成功している。

妻は医薬品会社を自ら創業する

一方、孫飄揚の妻である鐘慧娟は、「孫飄揚の妻」という立場で語られることが多いが、後に、翰森製薬グループとして香港証券取引所に上場する江蘇豪森医薬を率いてきた。鐘慧娟は江蘇省連雲港市生まれ。江蘇師範大学で化学を学んだのち、南京大学のEMBA(Executive MBA)を取得した。

鐘慧娟は江蘇豪森医薬の創業者であり、会長。江蘇豪森医薬は1995年設立当時、外国企業との合弁会社だった。最初の3年間は研究中心であり、販売できる製品はなかった。しかし、鐘慧娟は、この時期を乗り切り、会社を軌道に乗せた。江蘇豪森医薬を中国国内で数少ない研究開発主導型の製薬会社として発展させた。

2019年、江蘇豪森医薬が上場申請した会社は、「翰森製薬グループ」と命名され、同年、香港市場に上場を果たす。鐘慧娟は翰森製薬グループの会長兼CEOを務めている。

日本法人を名古屋に設立

2014年、江蘇恒瑞医薬の日本法人「ハンルイ医薬株式会社」が名古屋に設立された。社長には孫飄揚が就任した。同年、日本での医薬品卸売販売業許可と第一種医薬品製造販売業許可を取得し、2015年に中国医薬品会社の日本子会社として初となる製剤の製造販売承認を取得した。「ハンルイ」という商品名で点滴静注液を製造販売している。

一方、翰森製薬グループは、がんや中枢神経系疾患のジェネリック医薬品の開発で急成長を遂げ、現在、中枢神経系疾患、腫瘍学、抗感染症薬、糖尿病薬の4つを戦略的分野に位置づけている。

中国医薬品業界で孫飄揚と鐘慧娟夫妻が率いる2つの企業グループ会社は要注目といえる。(敬称略)

文:M&A Online編集部