こんにちは。ビズサプリの庄村です。
富士フイルムホールディングスが再生医療技術を取り込むために武田製薬工業傘下の和光純薬興業を買収。住友金属鉱山が半導体材料として使うリードフレーム事業から撤退。後継者難をきっかけとする中小企業による大手企業への事業売却といった事業の集中と選択のためのM&Aに関するニュースをよく耳にします。
今回はM&Aの代表的な方法として、事業譲渡と会社分割をテーマとしています。
なお、文中の意見は筆者個人の私見であることを予めご了承ください。
会社の事業部門を他社へ移す代表的な手段として、事業譲渡と会社分割があります。また、会社分割には、分割により新たに会社を設立する新設分割と、分割後にすでに存在する他の会社に承継する吸収分割があります。
事業譲渡は、単に事業を売買するという個別の資産、負債及び契約関係などの売買契約で、対価が金銭等で支払われるものです。
これに対して、会社分割は、会社法に規定された組織再編行為であり、対価が株式(新設分割の場合は、新設会社の新株。吸収分割の場合は、承継会社の新株)の交付です。
このように事業譲渡と会社分割は、会社の事業部門を他社へ移す代表的な手段ですが、法的に異なるものであるため、労働者保護手続き、債権・債務の承継、債権者保護手続きが異なってきます。
2.労働者保護手続
事業譲渡の場合、従業員の承継には、従業員個人と個別に交渉し個別の同意が必要です。
円滑な事業譲渡を行うためには、従業員の意向を十分に把握することが重要となります。その上で譲渡会社から譲受会社への承継の形態(出向、転籍等)、退職金の承継方法等を決めることになります。
また、事業譲渡に同意しない従業員は部署異動や転職等今後の処遇について十分な話し合いが望まれます。
他方、会社分割の場合は、労働承継法が適用され個々の従業員の同意を得ずに従業員を承継することができます。
ただし、従業員保護の観点から、労働者との協議(全体説明会・個別説明会)、労働者への事前通知が必要になります。
なお、会社分割では従業員は当然に承継されますので、差別的取り扱いを防止するために労働者の異議申し立てが認められ、申し立てのあった労働契約は承継会社に承継されません。