同社のカントリーリスク・マップの基準の一つ、決算書の入手のしやすさでも、実は国によって相当な差がある。
「日本は企業の財務状況を把握しやすい国の1つです。米国やシンガポール、それにオーストラリアなどは先進国といえますが、実は決算書が入手しにくい場合もあります。それは、法律や会計制度の違いというより、むしろ文化的な違いかもしれませんね」(田中氏)
取引文化の違いという面の1つに、日本は東京商工リサーチや帝国データバンクなど信用調査機関の充実が挙げられる。非上場会社、中小企業でも自社の円滑な取引を実現するため、決算がまとまった段階で、それら信用調査機関に登録してある決算情報を更新するケースが多い。また、新規取引に際して発注企業が与信調査を行うため、対象企業に決算書を提出してもらうことも一般的だ。
だが、海外との取引となると、日本と同じようにはいかない。先進国であっても、信用情報を得にくい国と企業があるのが現状である。
「この国はアブナイ!」などと即断するつもりはないが、マップをよく見ると、たとえばヨーロッパ諸国でも橙色で示されている国があり、また、信用取引リスクが高まっている国がある。それらの国の企業との取引においては、リスク要因を自社独自に分析する必要があるかもしれない。
また、特に経年推移で見れば、かつてはBRICsと呼ばれ、2000年代以降著しい経済発展を遂げてきたブラジル、ロシア、インド、中国も、今日のリスク情報の詳細は、同じ「B」ランクに属しているといっても国それぞれに異なる。また、日本企業との取引も増え、急成長するアジア諸国でも、その信用情報の差は大きいことが歴然と見てとれる。