リクルートキャリアに初の是正勧告を出した「個人情報保護委員会」とは?

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政府の個人情報保護委員会が初めての「是正勧告」を出した。リクルートキャリア(東京都千代田区)が就職情報サイト「リクナビ」に登録した学生の内定辞退率の予測データを販売していた問題で、同社に対し情報の管理が不適切だったとして組織体制の見直しなど是正を求める勧告を行った。その存在がにわかにクローズアップされている個人情報保護委員会とは。

個人情報の「お目付け」として2016年に発足

委員会が入るビル(中央、東京・霞が関)

個人情報保護委員会は国の行政委員会の一つに位置づけられ、高い独立性を持つ。同様の機関として人事院や公正取引委員会、国家公安委員会、中央労働委員会、運輸安全委員会などがあるが、これらに比べると歴史が浅いせいか、知名度がいま一つかもしれない。

2016年1月に内閣府の外局として個人情報保護法に基づき設置された。マイナンバー(個人番号)法の成立に伴い2014年1月に設置された前身の「特定個人情報保護委員会」を改組し、権限を大幅に強化してスタートした。マイナンバーを含む個人情報の適正な取り扱いの確保を目的とし、企業や自治体への立ち入り検査や指導・助言、法令違反があった場合には勧告・命令を行うなどの権限が与えられた。いわば、個人情報に関するお目付け役だ。

個人情報とは氏名や生年月日など特定の個人を識別できる情報を指す。本人を特定できる防犯カメラの映像やメールアドレスなどもしかりだ。これら個人情報の取り扱いについて、個人情報保護法は企業に対して利用目的の特定や通知、安全な管理体制、本人からの開示要請への対処などの対策を求めている。

個人情報保護委員会は企業の取り組みを監視・監督する役割を担う。また、特定個人情報と呼ばれるマイナンバーを取り扱うことの多い行政機関や自治体にも厳しく目を光らせる。

個人情報保護法違反で初の勧告

2018年度の監視・監督実績は次の通り。個人情報に関してはデータ漏洩など報告の受け付け1216件、報告徴収391件、指導・助言238件、あっせんなど31件。一方、マイナンバーは漏洩報告受け付け279件、指導・助言87件、立ち入り検査85件(行政機関6、自治体65、民間14)といった具合だ。

今回初の勧告事案となったリクルートキャリアは就職活動中の学生が内定を辞退する確率をAI(人工知能)で予測する独自サービスを開発し、昨年から第三者(企業)に販売していた。その際、7983人分の個人データについて本人の同意を得ず販売していたのは個人情報保護法違反に当たると認定された。

同委員会は、①組織体制の見直しや経営陣をはじめとした全社的な意識改革を行う、②今後検討する新サービスについても適正に個人データを取り扱うよう設計、運用する―ことを勧告。9月30日までに改善内容の報告を求めている。

陣容拡充、役割がますます高まる

委員長と委員8人は衆参両院の同意を得て内閣総理大臣が任命する。任期は5年。委員長は現在、嶋田実名子氏(元花王理事)が務める。事務局には事務局長のほか、次長、総務課と参事官4人が置かれている。委員会の定員は119人(2018年度末)。15年度末の52人から3年間で2.3倍に拡充されている。

インターネットが全盛を迎えて情報漏洩リスクがより高まっているのに加え、経済・社会活動のグローバル化に伴う国際的なデータ流通の拡大やAIに代表される技術の進展などへの対応が求められる中、同委員会の役割は一層増すことになりそうだ。

文:M&A Online編集部

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