トランプ米大統領がデンマーク領グリーンランドの買収を検討しているという。グリーンランドは北極海と大西洋の間に浮かぶ世界最大の島。デンマークとグリーンランド自治政府はトランプ大統領の買収構想に反発している。もっとも、当の米国にはかつてロシア帝国からアラスカ(現アラスカ州)を購入した“実績”もある。日本にとってあまりなじみがないグリーンランドとは?

人口5万7000人中、在留邦人は5人

グリーンランドは日本の約6倍の面積を持ち、その85%が氷床に覆われている。人口は約5万7000人。1㎢あたりの人口密度はわずか0.14人(日本は337人)に過ぎない。在留邦人は5人(2017年10月時点、外務省各国情勢データ)。

グリーンランドからは日本に甘えびをはじめ様々な水産物が多く輸出されている。対日輸出は全体の約1割を占め、日本は重要な貿易相手国。2017年5月には河野太郎日デンマーク・グリーンランド・フェロー諸島友好議連会長(現外相)が現地を訪問し、自治政府要人と会談している。

近年、地球温暖化の進展で北極圏の海氷が減少し、地下に眠る石油・鉱物資源や北極海航路の開発が進めやすくなっており、その要衝としてグリーンランドの地政学的な重要性が一段と増している。トランプ大統領の買収発言も、ロシアや中国の北極進出の動きを牽制する狙いがあるとみられる。

1979年に自治政府誕生

「グリーンランドは売り物ではない」。グリーンランド外務省はトランプ発言を受けて、こう表明した。トランプ大統領は9月2~3日にデンマークを訪問する予定で、その際、買収構想についての何らかの言及があるのかどうかが当面の注目点だ。

そもそも、グリーンランドがデンマークの一部であるのはなぜか。デンマーク・ノルウェー連合王国(当時)の植民地支配が始まった1720年代にさかのぼる。ノルウェーは1814年にデンマークからスウェーデンに割譲された後、1905年に独立した。グリーンランドはデンマーク傘下のまま、1953年に植民地から一地方と同等の地位を獲得した。

さらに1979年に自治権を与えられ、自治政府が誕生した。現在のキム・キールセン自治政府首相(2015年12月~)は7代目。

米はアラスカ、ルイジアナでM&Aの実績

歴史をひも解くと、米国は領土版のM&A(合併・買収)を手がけた実績の持ち主だ。その一つが1867年にロシア帝国から買い取ったアラスカ。ロシアはクリミア戦争(1853~56年)で国家が疲弊し、米国の植民地(ロシア領アラスカ)の売却を持ちかけたのが取引の発端。米国の購入金額は720万ドルだった。

さらにさかのぼると、1803年のフランス領ルイジアナの買収(米中部)がある。現在のアイオワ、コロラド、テキサスなど15州にまたがる地域を1500万ドルで購入した。

グリーンランドについては1946年に当時のトルーマン大統領が買収を計画したことがあったと報じられている。

となると、グリーンランドにはどのくらいの値が付くのだろうか。がぜん興味がわく。

M&Aでいえば、純資産に上乗せする「のれん」(買収プレミアム)をどう評価するかということになる。面積だけみれば、実はアラスカ171万㎢、ルイジアナ210万㎢、グリーンランド217万㎢と似たり寄ったり。だが、仮にも一国の領土を相手に、M&Aに必須のデューデリジェンス資産査定)などが成り立つのだろうか。

日本に現地法人を設立し、30年にわたって水産物を供給

日本では、グリーンランド100%子会社「ロイヤルグリーンランドジャパン」(東京都中央区)が活動する。1988年に事務所を開設し、1995年に法人化した。刺身用や回転寿司用の北大西洋産水産物を取り扱い、約110億円を売り上げる。

最後にお薦めしたい一冊が『アイスランド・グリーンランド・北極を知るための65章』(明石書店刊、2016年発行)。極北の歴史や文化、生活、意外な日本とのつながりなどを知ることができる。

文:M&A Online編集部