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著者 有森隆が語る『海外大型M&A 大失敗の内幕』の最新事情

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読みどころその3 海外投資銀行の餌食になるな-日本企業の経営者に不足しているもの

拙著『海外大型M&A大失敗の内幕』のあとがきでも触れたが、M&Aでは「買い手に高いリスクが伴う」。インドの後発薬メーカーのオーナーの兄弟は、第一三共に超高値で会社を売り払い、大富豪になった。今ではインドの「病院王」の名声をほしいままにしている。

M&Aは多くの場合、売り手がボロ儲けできるのである。

日本企業ならびに経営者には「会社を売って儲ける」という成功体験が決定的に不足している。これが、中身はボロボロなのに、表面だけを繕い、厚化粧した会社を買わされて臍を噛む根本的な原因になっている。

米国の著名な投資銀行は傷物の会社をしたり顔で日本に売り込む。日本の生損保会社が、この餌食になった。棚ざらしになっていた米国の保険会社が次々と日本企業の傘下に入ったのだから、驚かされる。

拙著では海外M&Aに潜む罠として、「のれん」の問題をくどいほど取り上げている。大型買収の「のれん」代は半端ではないからだ。買収した側の業績に重くのしかかることを、具体例を挙げて指摘した。

現在、「第3次M&Aブーム」との声が兜町でよく聞かれる。SMBC日興証券の調査だと、東証1部上場企業が関与するM&A案件は、買収金額ベースで2006年と2012年にピークを付けている。13年にはいったん減少したが16年は過去2番目の12年に肉薄したという。件数では過去最高だったとしている。

SMBC日興証券とは調査の基準が少し異なるが、M&A助言会社レコフの調べでは、2016年度の日本企業による海外企業買収額は、前年度比約3割増の10兆9127億円(過去最高)に達した。ソフトバンクグループによる英アーム社の買収が大きく寄与したものだが、件数ベースでも627件(前年度比6%増)と、やはり過去最高だったという。

とはいうものの、2006年の米ウェスチングハウス買収が東芝転落劇の序章になったように、M&Aが中長期的に見て、必ずしもプラス材料になるとは限らないのが難しいところだ。

コメント・文:有森 隆

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