司馬遼太郎が新聞記者時代に綴った「ビジネスエリートの新論語」

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数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A Online編集部がおすすめの1冊をピックアップ。M&Aに関するものはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識として役立つ本も紹介する。

司馬遼太郎「ビジネスエリートの新論語」

ビジネスエリートの新論語本著は、「2016年12月ビジネス書ランキング」(honto調べ)で第3位にランクインした1冊。昭和30年に司馬遼太郎が本名の「福田定一」の名前で刊行したエッセイ集を没後20年の節目に復刊させたものだ。

第一部では、当時まだ新聞記者というサラリーマンであった著者が、古今東西の名言を引用しつつ、“サラリーマン”という働き方、生き方について考察する。身の回りのエピソードを絡めながら、自身も含め会社という組織の中で生きていく人たちに向けて叱咤激励に満ちたメッセージを送っているようだ。

執筆当時から60年以上の月日が経ち、時代の流れと共にサラリーマンとしての働き方や生き方も大きく変わってきたが、その本質的なところは変わらないなと思わせる部分がある。

例えば、サラリーマンは職業ではないという「サラリーマン非職業論」。大企業ですらこの先どうなるのかわからない時代、月給制の上であぐらをかいていてはいけないとハッとさせられる。サラリーマンとして働く中でも、ただ目の前の仕事をこなすのではなく、仕事に対する筋の通った姿勢や創意工夫が必要であり、会社という城から放り出された時に気づいたら丸裸だったなんてことがあってはいけない。

そして、リンカーンの「四十歳を過ぎた人間は、自分の顔に責任をもたねばならぬ」という言葉も身に染みる。知識や教養、経験などが積み重ねられ、築き上げられてきた己の精神の全てが顔に表れるというのだ。

リンカーンはその指標を四十歳過ぎとしていたが、これは人によっても変わってきそうだ。ただ、社会に出て数十年が経てば、どんな人にも自ずと表に出てきそうなものである。そして、その表に滲む風貌でその先の運命も変わって来るというから、恐ろしいことだ。

第二部は、自身が職場で出会ったサラリーマンの姿を綴った2つの短編で構成されている。特に、著者の人生観や職業観に影響を与えていることがうかがわれる「二人の老サラリーマン」は必読だ。161ページから162ページにかけての老サラリーマンの一言が胸に突き刺さる人は多いはず(内容は是非その目でご確認を)。

できることなら、サラリーマン歴の浅いうちに読んでおきたい本である。

文:M&A Online編集部

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