数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A Online編集部がおすすめの1冊をピックアップ。M&Aに関するものはもちろん、日々の仕事術や経済ニュースを読み解く知識として役立つ本も紹介する。
「ファイナンス」という言葉を聞くと、財務的なイメージがまず浮かぶ。そうなると、数式がたくさんある本なのかと手に取ってみたが、数式はほとんどない。まさに、本著はそうした誤解を払拭して、「ファイナンス」を再定義してくれる1冊だ。
著者は、この本を通して繰り返し、「ファイナンスとは物の値段を考えること」であり、「意思決定を行うための方法」だと説く。
ファイナンスは、あくまでお金という枠組みで思考するためのフレームワークであり、教養の一つ。実務を重ねて行くことでそれぞれのファイナンス観を構築していくのであり、ファイナンスに教科書はないという。
そして、ファイナンスの技術を活用した最たるものとしてM&Aを取り上げ、ソフトバンクのボーダフォン買収、ゴールドマン・サックスや日本電産の事業再生案件などの具体的事例を交えながら、LBOや企業価値の評価方法など、そこで用いられたファイナンス技術のスキームを分かりやすく解説。この部分が本著の大部分を占めるところでもあり、経営戦略の歴史や潮流を時系列に沿って辿ってもいるので、昨今のM&A増加傾向の背景や経営戦略の全体像をつかむことができる。実務レベルで経営戦略に携わっていなくても、教養のための読み物として興味深く読み進められる内容だ。
一部の報道によって拝金主義的なイメージがつきまとうM&Aやファイナンスが、ウィンウィンの関係を築くことができ、いかに人間味があるものでもあるかということに言及しているのも面白い。
さらに、大企業によるCVC投資やベンチャー企業が目指すIPOといった、今後ますます活性化していくであろうベンチャー企業を取り巻くベンチャーファイナンスにも触れている。
詳細な数式などの専門的な知識に囚われずに、「ファイナンス」の本質を知るためにうってつけの1冊。企業の経営に関わるビジネスパーソンや経営企画を目指す人はもちろん、経済活動を行う全ての人にとって、ファイナンスの概念を理解しておくことは有益なはずだ。
文:M&A Online編集部
数あるビジネス書や経済小説の中から、M&A Online編集部がおすすめの1冊をピックアップ。今回取り上げるのは「危機対応のプロが教える!修羅場の説明力」。説明力を養うために必要な4つの力とは?