売れているのには理由がある――。数多あるビジネス書の中から、どの本をいま読むべきか決めるのはなかなか難しい作業。ならば、世間で売れている本に注目してみようというわけで、ハイブリッド型書店サービス「honto(ホント)」の協力のもと、ビジネス書の月間ランキングを毎月お届けする。
<2017年2月ビジネス書ランキング>
ランキング | タイトル/著者/出版社 |
第1位 |
はじめての人のための3000円投資生活 横山光昭 /アスコム |
第2位 |
嫌われる勇気 (自己啓発の源流「アドラー」の教え) 岸見一郎、古賀史健 /ダイヤモンド社 |
第3位 |
やり抜く力 人生のあらゆる成功を決める「究極の能力」を身につける アンジェラ・ダックワース /ダイヤモンド社 |
第4位 |
野村證券第2事業法人部 横尾宣政/講談社 |
第5位 |
弘兼流60歳からの手ぶら人生 弘兼憲史/海竜社 |
honto調べ(集計期間:2017年2月1日~2017年2月28日)
先月、先々月のランキングで4位、5位に粘り強くランクインしていた「はじめての人のための3000円投資生活」がついにトップに。春の新生活に備えて投資を始めてみようという人が多いのかもしれない。3000円という低予算でローリスクの投資信託への投資を勧める本著は、投資の入門書としては読みやすく、実践にも移しやすいだろう。
今回のランキングで取り上げたいのは、「野村證券第2事業法人部」。2月21日発売というにも関わらず第4位にランクインするあたり、世間からの注目度が高いことがうかがえる。それもそのはず、本著はオリンパス巨額粉飾決算事件で逮捕された著者による実名手記なのだ。前半は、野村證券の黄金時代を過ごした日々を、入社から退職するまで克明に記した。後半はその後のオリンパス騒動に至るまで、いかにしてこの事件に巻き込まれていったのか、事件の内幕を暴露する構成だ。
読み応えがあるのは、前半部分の80年代から90年代にかけての野村證券の内情だ。「ノルマ證券」と揶揄されていたころの営業マンに課せられたコミッション(手数料)ノルマの厳しさ。そして何とかそのノルマを達成しようとする社員たち。コンプライアンスという概念が定着してなかった時代ならではの、今では考えられないやり方で目標達成をする姿。それらが臨場感たっぷりに描かれている。
営業手口も赤裸々に明かされ、そのエゲツナイやり方には驚かされる。市場操作、夜討ち朝駆けや土下座は当たり前。時には顧客への郵便物を破り捨てるという無茶なことも。株を売るにも人と人の関係が濃い時代で、そんな暴挙に出られるのもゆらぎない信頼を築いているから故のこと。損得勘定だけでなく、情が絡んでくるあたりは何とも人間臭い(そこを著者ら当時の証券営業マンは利用しているといえば利用しているのだが)。いい意味でも悪い意味でも、バブル期の日本の勢いや野心を感じさせられる一冊だ。
まとめ:M&A Online編集部