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著者 有森隆が語る『海外大型M&A 大失敗の内幕』の最新事情

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読みどころその2 短期的には成功したJTの海外M&A

日本たばこ産業(JT)の海外M&Aは短期的には成功した。JTはM&Aで「成長の時間を買った」と、常々言っていた。1999年に米RJRナビスコの海外たばこ事業(RJRI)を傘下におさめ、2007年には英ギャラハーを買収した。RJRIが9400億円、ギャラハーは2兆2500億円。買収額は、それぞれの時期の日本企業による企業買収額としてはいずれも過去最高だった。3兆円超のクロスボーダーのM&Aで、JTは世界3位のたばこメーカーとなった。

JTの前身は、言わずと知れた日本専売公社。典型的な内需型企業で、グローバル化を担えるような人材はいなかった。5代目社長の木村宏氏は、日本人に依存しないでグローバル化を進めた。現地に権限を委譲し、丸投げしたのである。この木村氏の決断が、海外たばこ事業が稼ぎ頭に生まれ変わる転換点となった。

JTのグローバル戦略は他社にみられないものだ。海外事業を担うスイス・ジュネーブに本社を置くJTインターナショナル(JTI)を「世界本社」と位置付けている。2016年12月期のたばこ事業の売上収益(売上高、国際会計基準を適用しているので売上収益となる)は、海外が1兆1992億円、国内が6842億円。いまや「世界本社」JTIにぶら下がる「ローカル本社」がJTというのが実態だ。

だが、JTが得意としてきたM&Aを駆使した成長も曲がり角にさしかかった。英たばこ大手のブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BAT)は今年1月、米2位のレイノルズ・アメリカンを約5兆6000億円)で買収することで合意した。すでに42.2%分の株式を取得済みだが、残り57.8%分を買い取る。世界首位の米フィリップ・モリス・インターナショナル(PMI)に対抗する。たばこ業界の新たな巨人が誕生する。

JTの収益規模は、2社に、大きく水を開けられた。世界4位の英インペリアル・ブランズを買収する手が残されているが、JTがインペリアル・ブランズを買収するには、独占禁止法の壁がある。英ギャラハーを傘下にもつJTが、インペリアルを合併すると英たばこ市場シェアが8割を超えてしまうからだ。

たばこに依存した成長は困難になっている。成長はストップ。そうなれば、1兆6020億円という気が遠くなるような「のれん」代をどう処理するのかが喫緊の経営課題となる。この帰趨によって、クロスボーダーM&Aが成功したか、失敗したかの最終評価が定まる。

17年3月に開催された株主総会では、「医療のM&Aを仕掛け、医療を成長の柱にすべきだ」という質問が株主から寄せられたという。JTは鳥居薬品を傘下に持っている。

以上、キリンとJTの2社について最新情報を含めて書いてみた。

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