アンジェス、「大阪ワクチン」が開発できなくても困らない理由

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アンジェスの「大阪ワクチン」は時間切れか?(写真はイメージ)

「コロナワクチン」へのチャレンジで資金獲得に成功

今となっては海外でのコロナワクチン大規模臨床実験は難しい(Photo by DMCA

すでに海外での豊富な治験実績があり、外国医療機関との関係が深い国内大手製薬はともかく、アンジェスのようなベンチャーでは厳しいと言わざるを得ない。これから実施する大規模な治験に協力するとしたら、予防用のワクチンではなく、罹(かか)ってしまったコロナ感染症を治す治療薬だろう。

ワクチンの実用化は厳しくなってきたアンジェスだが、仮に開発を断念したとしてもダメージは限定的だ。ワクチンの研究開発費は無駄になるかもしれないが、2020年5月に国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)が公募する「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン開発」に採択されて20億円の研究費を受けたほか、同8月には厚生労働省の「ワクチン生産体制等緊急整備事業」で93億8030万円の助成金を得ている。

それらに加えてワクチン開発が市場で好感されたのが追い風となり、同12月に約111億円の第三者割当増資を実施し、これを原資にゲノム編集技術を持つ⽶EmendoBio Inc.を買収。2021年3月にも同じく第三者割当増資で約168億円の資金調達に成功している。

コロナワクチン開発に着手したおかげで、研究助成金で約113億円、開発発表以降の第三者割当増資で約279億円、合計392億円の資金を得られたことになる。アンジェスにとってはたとえ実用化に至らなくても、十分に「実」を取れたチャレンジだったのは間違いない。創薬ベンチャーの「面目躍如」と言えそうだ。

文:M&A Online編集部

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