液晶の延命は2023年まで

ならば、なぜ未来のないJDIにアップルは資金を提供するのか?実はまだアップルには液晶ディスプレーが必要だ。2019年9月に発売した廉価版の「iPhone11」では液晶を採用しており、全機種が有機ELに切り替わる2020年モデルの投入までは液晶が必要だ。

2019年モデルの「iPhone11」では液晶は生き残った(アップルのホームページより)

さらに2020年春に投入されるサブライン(傍流)モデルの「iPhoneSE2」は上位機の半額近い価格に設定されるとみられ、徹底的なコスト削減のために低コストの液晶が採用される可能性は高い。

韓国や中国のスマートフォン向けディスプレーメーカーは有機ELシフトを進めており、低価格で高品位の液晶を安定供給できるメーカーは限られている。

つまり韓国・中国メーカーの「脱液晶」が進む現状では、JDIを倒産させるわけにはいかないのだ。それでも有機ELの価格がこなれてJDIが提供する液晶並みの価格に下がれば、同社は「用済み」になる。

アップルがJDIに出資した資金は回収できなくなるが、20兆円を超える手元資金を持つだけに当面の間だけでも液晶ディスプレーの供給を受けられれば問題はない。

むしろ圧倒的な資金力を持ちながらJDIの買収まで踏み込まず、支援を小出しにするアップルは、量産化が進んでいるJDIの有機ELには興味がないとみてよさそうだ。長期的な支援は見込み薄だろう。

これからもアップルは液晶を必要としている間は運転資金レベルの支援を継続し、あわよくば中国や台湾の企業にJDIを買収してもらい、出資の回収を目指すことになる。だからアップルはJDIの売却には積極的に関与するだろう。

しかし、そんなことは中国・台湾企業には「お見通し」だ。「先が見えている」JDI売却が難航するのは避けられない。時間が経過すればするほど、アップルから液晶を受注できる期間は短くなり、JDIの企業価値はじりじりと下がっていく。

液晶モデルの「iPhoneSE2」が予定通り発売されたとしても、2023年頃にはモデルチェンジで低価格の有機ELを搭載する可能性が高い。JDIの売却が早いか、アップルの液晶モデル廃止が早いか。JDIの売却は時間との勝負だ。

文:M&A Online編集部