ルーブル暴落は日本に何をもたらすのか?帝国データバンクによると、ロシアにはトヨタ自動車<7203>や「ユニクロ」を出店しているファーストリテイリング<9983>など347社の日本企業が進出している。ルーブルが暴落すると輸入品の価格は暴騰する。そのためロシアでモノやサービスを売っている企業は苦労するだろう。売れ行きが落ちなくても、経済制裁下では顧客から受け取ったルーブルを日本円に換金するのも困難だ。
米マクドナルドやスウェーデン発祥の家具世界最大手イケア、ファストファッションブランド「ZARA」を展開するスペインのインディテックスなど、ロシア事業を停止する企業が相次いでいるが、ウクライナ侵攻に対する政治的な抗議ばかりではない。
ロシア事業が当面は利益を生まないとみた経営的な判断も大きいはずだ。10日に米アルファベットは動画投稿サイト「YouTube」とアプリ販売プラットフォーム「Google Play」のロシアでの有料サービスを停止したが、その理由として経済制裁で料金決済が難しくなったことを挙げている。
トヨタにせよファーストリテイリングにせよ日本企業のロシア事業の比率は、欧米企業に比べると小さい。日本の輸出入総額に占める対露貿易のシェアは輸出が約1.04%、輸入が約1.82%ほどだ。ルーブル暴落が回り回ってエネルギー価格上昇や世界金融危機につながるという間接的な影響はあるにせよ、直接の影響は限定的だろう。
一方、ルーブル暴落がソ連邦末期のレベルにまで悪化してプーチン政権が倒れれば、金融や経済での巨額支援と引き換えに北方領土返還交渉が前進する可能性はあるかもしれない。ただ、帰島を願っている元島民の高齢化は進み、本土の北海道ですら人口減少に悩んでいる。自然環境が厳しく、インフラも未整備の北方領土を日本国民の税金で「買い戻す」べきなのか、熟慮する必要はありそうだ。
文:M&A Online編集部
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