その後も2008年のリーマン・ショックや、2014年の石油価格下落とロシアのクリミア併合に伴う経済制裁でルーブルが暴落した。2008年、2015年は年間インフレ率が15%(2014年は11%)に達し、国民生活は苦境に立たされた。ウクライナ侵攻に伴う経済制裁は当時よりも厳しく、インフレ率もさらに上昇する可能性が高い。
国際会計基準では「3年間で累積100%以上の物価上昇」をハイパーインフレと定義している。年率26%の物価上昇が3年間続けばハイパーインフレとなる計算だ。そのような事態に陥れば、ルーブルはほぼ無価値となり、経済が完全に破綻する。
ロシアでもソ連邦崩壊後の1992年に、年間インフレ率2000%をはるかに超えるハイパーインフレに見舞われた。だがすでにソ連邦時代末期には、自国内ですらルーブルの信用は完全に失墜。ルーブルで支払う一般店舗からは商品が消える一方、米ドルしか使えない「ドルショップ」には商品があふれる状態だった。「品切れ」のはずの一般店舗でも、ドル札を見せると店の奥から商品が出てきたという。
とはいえ共産主義時代のソ連邦で一般市民が米ドルを手に入れるのは容易ではなく、輸入タバコの「マルボロ」を通貨代わりに使うことさえあった。米ドルを持たない一般市民が未開封のマルボロと食料品を交換。それを受け取った食品店がマルボロで仕入れをしたわけだ。
ロシアが再びそうした「ルーブル崩壊」に追い込まれるリスクは高まっている。民主主義を知らない国民を恐怖政治で抑え込んでいたソ連邦ですら、ルーブル崩壊を引き金に倒れた。同様の事態に陥れば、さすがにプーチン政権はもたないだろう。