日本政府が2022年度にも14業種で外国人就労の在留資格を大幅に緩和する見通しとなった。新たに13業種について、最長5年で本人のみにしか在留を認めない特定技能1号から、更新可能で家族帯同も認められる同2号に変更。介護職については別制度で長期就労ができるようにする。ここに来て在留資格を緩和するのは労働力不足もさることながら、納税者を増やしたい思惑もある。
現在、同2号が適用されるのは建設や造船・船用工業など、日本人労働者だけでは立ち行かない業種に限られている。現在、同2号への移行が検討されているのは、農業や漁業、外食業、宿泊業、ビルクリーニングなど技能試験や日本語試験に合格した同1号労働者を受け入れている業種だ。
これらの業種では慢性的な労働力不足に加え、ポストコロナで急速な求人増が予想されており、円滑な人材供給が急務になると見られている。中小企業で組織する日本商工会議所も、2020年12月に「外国人材への期待と関心は高い」として、政府に同2号対象業種の拡大を働きかけていた。
国税庁の「令和2年分民間給与実態統計調査」によると、令和2(2020)年の納税者数は前年よりも8万人減って4452万人となった。今後も少子化に伴い、緩やかに減少していく見通しだ。さらに高齢化に伴う所得減で、税収額も伸び悩むだろう。
そうなると新たな納税者として、外国人労働者が必要になる。単なる「労働力」の確保が目的であれば、5年で帰国する従来の同1号労働者で良いが、「納税者」となると長期的に居留してもらわないと、安定した財源にならない。さらに新興国や発展途上国では少子化が進んでいないことから、家族帯同となると人口増にもつながる。
この規制緩和は自民党の保守派から「移民受け入れにつながりかねない」との反発を受けかねないが、対象となる14業種ではすでに外国人労働力が安定供給されなければ立ち行かなくなっている。自民党保守派も、そうした慢性的な人手不足の「解決案」を持っているわけではない。ましてや納税者の減少は国家財政上、深刻な問題になる。
特に自民党の「岩盤支持層」である農家や中小企業経営者からの要望が強いだけに、外国人就労の規制緩和は間違いなく実施されることになるだろう。ただ、ポストコロナでは世界的に労働力不足が問題になるのは避けられない。いくら門戸を広げても「安価で使いつぶせる労働力」扱いでは、肝心の人材が集まらない可能性も高い。外国人労働者の待遇向上や権利保護が極めて重要な課題になる。
文:M&A Online編集部