■トランザクションの特徴・ディールブレークイシュー

このタイプのM&Aの案件の進み方としては、バイサイドによる、よりプロアクティブなアプローチをとることが多くなります。たとえば欧州で、X製品の研究開発機能を強化したい、原材料調達機能を強化したい、現地販売チャネルを確保したい、となった場合、プロファイルに合う企業を自らリストアップし、タッピングしていく必要があります。

なぜなら、持ち込み案件(売却が顕在化している案件)を待っていても、こうしたプロファイルに合うターゲットが出てくる可能性は相対的に低いと考えられるためです。従って、タップしては断られるということを繰り返し、結果がでるまでには数年かかるということもざらにあり、とても忍耐強い取組みが必要になるケースと思われます。

一方で、こうした特定の機能を買収したいというニーズは、自社のバリューチェーン構築戦略から導出される個別性の高い動機であり、他社も全く同様の動機を持って同じターゲットを買収する意向を持っている可能性は相対的には他のケースより低いと考えられます。したがって、垂直統合型の場合、水平統合型案件と比較すれば、入札ではなく、相対かそれに順ずる形で進めることができる可能性は比較的高いと思われます。

また、案件の規模も相対的にそれほど大きくならないことが想定されます。特定の機能を手中にすることができるのであれば、基本的にはターゲット企業自体の規模は大きな問題とならないことが多いためです。

垂直統合型のM&Aにおいてもっとも困難なのは、「ターゲット企業が持つ、欲しい機能以外の経営資源や事業をどうするか」という問題です。

例えば、自社としては調達機能だけが欲しいとしても、当然ターゲットは自社の事業の継続を考えれば、調達機能だけを売却することはほぼあり得ません。欲しいもの以外をどれだけ買収スコープからはずすことができるか、また、「必要のない機能」も含めて買収した場合、どのような対応が必要か、ということが最も大きな課題となり、交渉の重要論点のひとつとなります。