実務者必見!「こっそり学ぶPPA(取得原価の配分)」第2回 無形資産の評価
M&Aに必須のPPA(Purchase Price Allocation)について、実務経験が豊富な会計士が留意すべき点について解説します。
これまでの連載でPPAの結果はのれんや無形資産の償却等を通してM&A実施後の買収企業の事業計画や業績に影響を与えることを述べてきました。
PPAの実務において企業担当者は、特に下記の点に留意すべきと考えます。
経済的耐用年数は、実務上最も重要な論点であり、十分な検討が必要とされます。有形固定資産であれば、税法上の規定など資産の種別に応じた耐用年数に関する指針等が存在しますが、PPAにおいて無形資産を評価する場合にはそのような汎用性のある指針はなく、認識される無形資産について案件毎に個別的な検討が必要です。
実務上は、図表1にあるように、商標権や契約関連資産で法的保護期間(契約期間)が明確なものについては、残存保護期間や更新可能性が考慮されます。
一方、契約期間が不明確な契約関連資産や顧客資産については、取引の継続実績や過去の顧客減少率といった、被買収企業から入手できる関連データを総合的に勘案して、経済的耐用年数が決定されることとなります。
(図表1)PPAでの耐用年数
無形資産の種類 | 耐用年数の検討材料 |
---|---|
商標権、特許権など | ・法的保護期間及びその更新可能性 |
契約関連資産 | ・契約期間 ・評価基準時点までの継続年数 ・評価対象の減少割合(減少率) |
顧客資産 | ・評価基準時点までの継続年数 ・過去の顧客減少率 |
(※筆者作成)
実際には、買収過程で実施されたデューデリジェンスにおいてPPAに必要な情報が入手できていない場合や、詳細なデータを被買収企業から入手することが困難な場合等、入手できる情報が限定される場合も多々あります。
そのように、情報が限定的な状況において決定される経済的耐用年数は、監査上特に論点や争点となることが多く留意が必要です。
M&Aに必須のPPA(Purchase Price Allocation)について、実務経験が豊富な会計士が留意すべき点について解説します。