【中小企業のM&A】「売手が80歳の高齢者」「小が大を譲り受ける」…M&A成約事例・PART2

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M&A成約事例集・PART2

前回に引き続き、顧客向けセミナーや金融機関向け勉強会でのリクエストが多い「成約事例」について書いてみたいと思います。

その1.期限がある中でのM&A成約

    売手企業(A社)と買手企業(B社)の概要

    A社
    業種:新車自動車販売
    売上:約250百万円

    B社
    業種:中古車自動車販売
    売上:約1,200百万円

    【案件成立までの概要】
    A社社長は、80歳で最近物忘れが多くなってきていた。私との面談をしている中でも会話内容に統一性がないところがあり、事業には関係ないが株主で法定相続人の一人である娘さんにも早いうちから参加してもらうことにした。

    B社とのトップ面談にも初回から同席してもらい、DD(デューデリジェンス)用の資料を集めてもらうなど交渉事についてもその都度、娘さんからA社長に確認してもらってから回答するということを繰り返していた。途中からは念のため弁護士を任命し、A社長個人の相続対策も含めての支援となったわけだが、結果的にはA社長の症状が悪化したこともあり、娘さんのサポートなしでは成約しなかった案件と言える。

    B社もA社の事情を理解してくださり、譲歩するところは譲歩してスムーズなディールになるよう協力してくれたことも成約要因の一つであることも記しておきたい。

    その2.小が大を譲り受けるM&A成約

      売手企業(A社)と買手企業(B社)の概要

      A社
      業種:スーパー
      売上:約350百万円

      B社
      業種:飲食店(個人事業主)
      売上:約100百万円

      【案件成立までの概要】
      A社は、地方にある財務内容良好なスーパーマーケット。地元の人気店で地元の雇用も担っている地域になくてはならないお店である。A社社長には娘さんが3人いるが、いずれも県外に嫁ぎ、事業を引き継ぐ意思はない。このエリアは過疎化が進んでいる地域であり、大手の同業スーパーはA社の良好な財務内容に一定の評価はするものの、買収をする大義がなく立て続けに3社から断られていた。

      B社は市街中心街で飲食業を営んでいたが、お子さんが生まれてからは、長時間労働や個人事業の限界に夫婦ともに悩んでいた。トップ面談では互いに異業種ということもあり最初は不安定な交渉となったが、B社家族が移住してA社を引き継ぐ決断をしたことで急展開。資金面についても政府系金融機関と民間金融機関から買収対象であるA社がLBO(レバレジド・バイアウト=借入金を活用した買収)による資金調達を行うことで解決した。

      その3.地域の経営資源を若者が引き継ぐM&A成約

        売手企業(A社)と買手個人(B氏)の概要

        A社
        業種:公衆浴場
        売上:約8百万円

        B氏
        業種:創業希望者

        【案件成立までの概要】
        A社は地元で長年親しまれてきた銭湯。夫婦で経営してきたが、ご主人が入院したこともあり奥様は一旦廃業を決断した。その銭湯を利用していたB氏は廃業の話しを聞いた時、自ら後継者になりたいとの思いを告げ脱サラし、創業による事業引き継ぎを決断した。

        銭湯は長年、地域住民どうしの触れ合いに利用された大切なコミュニケーションの場でもあり、自家風呂があっても銭湯に通うという根強いファンも多数存在する。赤字事業を引き継ぐ形でのスタートとなったが、古き良き魅力を保ちつつ、新しいファンを増やすことにもチャレンジしている。

        文:Antribe社長 小林 伸行(M&Aアドバイザー) 

        M&A Online編集部

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