今後の事業展開では(有効回答83社)、今後も「自社地元」での販売に力を入れるとする回答が41社(構成比49.4%)と半数を占めた。次いで、「東京都市部」進出に意欲を燃やすメーカーも29社(同34.9%)あった。
都市部を中心にしたビアパブ人気にあやかり東京都市圏で知名度を上げたいメーカーも多く、自社でアンテナショップを出店するメーカーも増えている。だが、地ビールメーカーとして地元にこだわるメーカーも少なくない。
大手5大メーカーが地ビール、クラフトビールの製造販売に乗り出す動きが本格化しているが、中小地ビールメーカーも大手メーカーとの差別化に強気な姿勢を見せている。「独自の味」を追求するとの回答が38社(構成比45.8%)と最も多く、中小地ビールメーカーならではの味を追求し競争力を強めている。
「大手を意識せず従来通りの営業を続ける」は32社(同38.6%)と約4割を占めた。また、「大手メーカーの地ビール業界への参入が地ビール市場への関心を高める」と歓迎する回答もあり、「独自の味」「大手を意識せず従来通りの営業を続ける」など全体の84.4%が大手メーカーの市場参入を前向きに受け止め、地ビールメーカーは独自の道を歩む意欲が透けて見える。
地ビールメーカーの「主力製品の味わいはどのタイプか」を尋ねると、83社の回答は分布図のように様々だった。
コクがあって苦味が強い、スッキリし苦味も少ない、などメーカーの志向は千差万別だ。ただ、これが大手の画一化した味にない地ビールメーカーの個性であり、特徴でもある。ブランドやメーカーの特徴と独自性が際立つほど、地ビールの面白さも味わいも奥深くなるのだろう。
大手メーカーの地ビール、クラフトビール進出の影響を受けているかを尋ねると、56社中42社(構成比75.0%)が「影響なし」と回答した。逆に、「大手のクラフト市場への進出で一般消費者への認知度が上がりプラスの影響があった」と歓迎する声もあった。
「東京、大阪、名古屋など大都市圏で地ビール、クラフトビールを扱うビアパブが増え、市場が大きくなっているように感じる」「大都市圏以外の県庁所在地にビアパブの出店が増えたことで出荷が増えた」「地ビール、クラフトビールを扱う店舗数が増え、以前の地ビールブームに比べ需要は底堅い」など、地ビールメーカーでは現在のブーム持続を期待する声が多い。
1994年~99年の「第1次地ビールブーム」では、「価格が高い」「味が個性的すぎる」「製造技術が未熟」などの問題がクローズアップされ、ブームはあっさりと終焉を迎えた。こうした事態を経て、地ビールメーカーが消費者を向いたビール造りに取り組み、さらに多様な商品を開発して市場規模を広げている。今後も大手メーカーと切磋琢磨したビール作りが新たな消費者の開拓につながる可能性を見せている。
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