【相談所】中小企業でも上場できるの?

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「上場」とは、証券取引所において、株式や債券などの有価証券や商品先物取引の対象となる商品を売買できるようにすることです。その中でも、株式を上場することについては、「新規株式公開(IPO)」と言います。

東証マザーズやJASDAQといった上場しやすい市場には、常時使用する従業員の数が中小企業の定義の範囲内であるため、中小企業と定義される誰もが知っている有名企業が入っていたりします。

今回は、「ウチは中小企業だから、上場なんて、夢のまた夢」と思っている経営者の方に向けて、IPOを諦める必要はないことをお伝えいたします。

<中小企業の要件>

中小企業の定義は、中小企業基本法、法人税法など、法律によって定義が異なります。中小企業基本法の定義では、「資本金の額又は出資の総額」と「常時使用する従業員の数」、この2つの基準によって、中小企業であるか否かを判断できます。

中小企業基本法の定義(業種の分類)
©筆者作成

<株式の市場区分>

上場した株式を取引する場所が証券取引所です。日本には、東京・名古屋・福岡・札幌の4か所に証券取引所があります(大阪証券取引所は2013年に東京証券取引所と統合)。各証券取引所にはいくつかの市場が設定されており、本則市場(第一部、第二部)、新興市場、その他の市場などに区分されています。

国内の証券取引所で、全体の株式売買代金の9割以上を占めているのが、東京証券取引所です。現在、東京証取引所には、本則市場に市場第一部と市場第二部、新興市場にマザーズとJASDAQ(スタンダード、グロース)の計4つの市場区分があります。

なお、東京証券取引所は、2022年春に市場の再編が決定しています。各市場のコンセプトの明確化と、上場後の積極的な企業価値向上を促すため、新しい市場区分での運用が始まる予定です。

見直し後の市場区分は、プライム市場、スタンダード市場、グロース市場の3つになります。なかでもグロース市場は、現在のマザーズ市場の新規上場基準から一部緩和される要件があり、より上場しやすくなるといわれています。

東証 市場区分の変更

日本取引所グループ ホームページ 「市場区分見直しの概要」から引用

グロース市場の上場基準(概要)

グロース市場の上場基準(概要)
日本取引所グループ ホームページ 「市場区分見直しの概要」から引用

<株式上場の審査基準>

株式を公開するには、各証券取引所の各市場が設定している形式基準(株式数、流通株式数、流通株式時価総額などの定量的な基準)、と実質基準(コーポレートガバナンス及び内部管理体制の有効性、国際性、成長性などの定性的な基準)を満たし、審査に承認される必要があります。

東京証券取引所は、上場審査等に関するガイドラインの中に、
①企業の継続性及び収益性
②企業経営の健全性
③企業のコーポレートガバナンス及び内部管理体制の有効性
④企業内容等の開示の適正性
⑤公益又は投資者保護の観点
の5つの適格要件を記載しています。

つまり、中小企業の従業員規模であっても、上場を希望する市場の審査基準を満たして承認を得ることで、IPOできるのです。

一方で、前述のとおり、2022年4月4日から始まる東証の市場再編で、上場しやすくなる分、上場廃止基準も高まる点に注意が必要です。

<中小企業でも上場しやすいTOKYO PRO Market>

そこで最近注目されているのが、東京証券取引所のプロ投資家向けの市場である、TOKYO PRO Marketです。

TOKYO PRO Marketの市場の上場要件は、
①市場の評価を害さない
②事業を公正かつ忠実に遂行している
③コーポレートガバナンス及び内部管理体制が適切に整備されて機能している
④企業内容・リスク情報等の開示を適切に行う
⑤反社会敵勢力との関係を有しない
の5点です。

こちらの市場の上場要件はすベて定性的なものであり、定量的なものはありません。よって、創業間もないベンチャー企業や中小企業にとって、上場しやすい市場となっています。

最近のIPO企業の規模比較(2017年~2019年までのIPO企業)

IPO企業規模比較
日本取引所グループ ホームページ「新規上場基本情報 市場構成」より引用

<株式上場のメリットとデメリット>

最後に、株式上場する際の、メリットとデメリットをまとめました。

メリットは、①事業拡大するために必要な資金を投資家から調達しやすくなる、②企業の知名度アップ、③社内管理体制の整備で従業員の士気向上、といった点です。

デメリットは、①上場するための社内管理体制の整備に時間と労力がかかる、②上場後も年間上場料といった上場維持費がかかる、③投資家が株主として会社の経営に関与してくる、といった点です。

以上、各証券取引所の各市場で求められる審査基準をクリアすれば、中小企業でも株式上場できることをお伝えしました。

事業拡大や新規事業といった大きなチャレンジを計画している中小企業の経営者の方は、市場区分ごとの審査基準、株式上場のメリットとデメリットを踏まえて、株式上場を検討してみてはいかがでしょうか。

文:和田 純子(中小企業診断士)

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和田 純子 (わだ・じゅんこ)

中小企業の経営者に寄り添い、後継者と伴走する中小企業診断士・事業承継士。建設会社で建設ドキュメントの作成に従事した後、中小企業診断士として独立。現在は、事業承継と後継者育成を中心とした経営コンサルティング、講師業などを行っている。


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